和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2024年12月19日(木)

故郷でワイン造り目指す 田辺市大塔地域出身の高垣さん

ワイン造りを目指してブドウの苗木を植えた棚田(和歌山県田辺市面川で)
ワイン造りを目指してブドウの苗木を植えた棚田(和歌山県田辺市面川で)
高垣敬さん
高垣敬さん
 和歌山県田辺市面川(大塔地域)出身の高垣敬さん(60)が大手食品メーカーを退職してふるさとに戻り、地域でのワイン造りを目指しブドウの栽培を始めた。この地に適した品種を見つけようと、12種類の苗木計約300本を植えて栽培に挑戦。「ワイン造りを通じ、過疎が進む地域の再生に貢献したい」と意気込んでいる。

 高垣さんは現在は統廃合された地元の小中学校を卒業後、田辺高校に進学し、下宿するために地元を離れた。その後、群馬県にある大学に進み、卒業後は大手食品メーカーに就職した。

 総務や生産、物流などに携わって忙しい日々を過ごしていたが、50代初めからゴールデンウイークに帰省して実家の田植えなどを手伝うようになる中で「昔はたくさん人がいたのに、今では作っていない田んぼも多い。体力のあるうちに会社を辞め、地域に貢献できることがしたい」との思いが高まり、2019年10月に58歳で退職。昨年11月、約45年ぶりにふるさとに帰ってきた。

 故郷で何をしようかと考えるため地域活性化のセミナーなどに通って情報を集め、近年、世界的に認められるようになってきた「日本ワイン」に注目した。

 地域で栽培されたブドウを使った、その地ならではのワインは高付加価値で、若者からお年寄りまで好まれる。観光面でも「ワインツーリズム」として人を呼べるとして、ワイン造りへの挑戦を決意。ワイナリー(ワイン醸造所)を見学するなどして準備を進めていた。

 昨年12月から苗木を植え始め、今年2月までに、面川の自宅前にある棚田約10アールと、22年の再開が予定されている熊野地区の「百間山渓谷キャンプ村」近くに友人から借りた休耕田約3アールに、ピノノアールやカベルネソービニヨン、シャルドネ、メルロー、甲州、マスカットベリーAといった種類の苗木を植えた。

 23年秋の初収穫を目指して栽培に取り組みながら、今年4月からは長野県にある「日本ワイン農業研究所」に1年間通い、栽培方法やワインの醸造、経営などについて学ぶ予定。23年春ごろまでには、醸造所も整備する計画という。

 高垣さんは「ワイナリーを核として、地域を復興させたい。将来、おじいちゃんやおばちゃんが、孫などにこっちに戻って来いよと言えるようになればうれしい。ふるさとのためにベストを尽くさずに終わりたくはないので、覚悟を持ってやりたい」と話している。