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オンラインで農業遺産解説 みなべの農家が大学生に授業

地元で採れた蜂蜜を見せながら、世界農業遺産の生物多様性の大切さを伝える上野章さん(15日、和歌山県みなべ町芝で)
地元で採れた蜂蜜を見せながら、世界農業遺産の生物多様性の大切さを伝える上野章さん(15日、和歌山県みなべ町芝で)
 和歌山県のみなべ・田辺地域世界農業遺産推進協議会のプロジェクトチームによる取り組みとして、みなべ町東吉田の梅農家、上野章さん(48)が15日、和歌山大学観光学部の学生にオンラインで、世界農業遺産「みなべ・田辺の梅システム」について解説した。本来は同町に来る計画だったが、新型コロナウイルス感染症の影響でオンラインでの授業となった。6月に同町清川の梅畑から収穫の様子などを伝えたのに続く2回目。

 和大の学生の協力を得て「みなべ・田辺の梅システム」を小中学生が楽しみながら学ぶことのできるプログラムを作ろうと、昨年から始まった「まちキャンパスプロジェクト」の取り組み。学生は同学部の出口竜也教授(56)のプロジェクト演習「ローカルウィキでみなべ町を編集しよう」の授業で2年生11人が自宅から参加。みなべ町からは、上野さんや町うめ課職員の下浦智久さん(47)が同町芝の町役場から伝えた。

 はじめに学生からの質問に答える形で進んだ。「梅システムはどれくらい知名度があるか」という質問には、下浦さんが「特産の南高梅と比べても低い。知名度が上がれば地域活性化になると思うので、皆さんに有名にしていただけたら」、上野さんは「名前は聞いたことがあっても、内容はどれだけ知っている人がいるか分からない。プロジェクトを通じて特に子どもたちに伝えたい」と語った。

 「畑の急斜面を歩く時、気を付けていることは」と聞かれると、上野さんは「自然とバランス感覚が体に染みついている。つま先重視で、足の置き方でエッジを利かせたりする」と説明した。「梅栽培で近年、変化してきたことはあるか」という質問では、上野さんが、最近はエア剪定(せんてい)ばさみを使ったり、表面に紅色が差し、高単価の「紅南高」がより収穫できるような剪定を取り入れたりしていることも紹介した。

 新規就農については上野さんが、今後は新型コロナの影響でリモートで会社勤めをしながら就農するというケースも出てくる可能性があるのではないかと話した。

 他に「どれくらいの範囲を、何人くらいで作業しているか」「次の担い手はどう見つけていくか」などの質問もあった。

 上野さんは、梅システムの重要なキーワードである「生物多様性」について、例えば、ミツバチは梅の花の蜜だけでなく、薪炭林にあるさまざまな草木の蜜を集めていることを、ハゼやソヨゴ、梅の木の下に生やすマメ科の「フェアリーべッチ」の花の蜂蜜を見せながら、また受粉には、ハチだけでなく、鳥のメジロなども貢献していることも伝えた。

 今後の計画で、上野さんは10月以降、紀州備長炭作りの炭窯を見てもらいたいことや、蜂蜜の食べ比べ、植樹などもしてほしいことも話した。学生らは「梅システムの知識が増えた」「早く現地に行って、自分の目で見たい思いが強くなった」「梅は食べることにフォーカスしがちだが、作るまでのストーリーや農家の工夫が面白い。外からの視点だからこその気付きを生かしたい」と話した。

 出口教授はオンラインでの授業について「学生たちから現地に行きたいという声が出ており、現地に魅力があることが伝わっていると思う」と語った。

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