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「誤飲死否定できない」 ドン・ファン事件 和歌山地裁の無罪判決

 「紀州のドン・ファン」と呼ばれた和歌山県田辺市の野崎幸助さん(当時77歳)に覚醒剤を飲ませて殺害したとして殺人罪などに問われた元妻の須藤早貴被告(28)に、和歌山地裁は12日、無罪判決を言い渡した。元妻が覚醒剤の密売人から受け取った物が覚醒剤だったとは言い切れず、野崎さんが誤って覚醒剤を過剰摂取した可能性を否定できないと判断した。


 判決によると、野崎さんは2018年5月24日、致死量を超える覚醒剤を口から摂取したことによる急性覚醒剤中毒で死亡した。

 これまでの公判で、検察側は「元妻が犯人だ」と主張し、弁護側は一貫して無罪を主張していた。

 判決は、密売人の1人が「本物の覚醒剤だった」と公判で証言したことについて「自分の記憶や認識に基づいてありのままを述べたと考えられる」としつつ、本物かどうかを確実に識別できたかどうかは「疑問が残る」とした。

 野崎さんの死亡については、5月に死んだ愛犬のお別れ会を6月に予定していた点を踏まえて、自殺は「およそ考えられない」としたほか、元妻以外の第三者による殺人の可能性は「否定できる」と判断した。

 一方、野崎さんは人脈や行動範囲が広く、経済的な余裕も十分あったことから、誰かに依頼して覚醒剤を入手することは「可能だった」とした。何らかのきっかけで野崎さんが薬理効果に関心を抱き、初めて覚醒剤を使う際に誤って致死量を摂取した可能性を指摘した。

 こうした判断を踏まえ、元妻が殺害したのではないかと疑わせる事情はあるものの、それを推認するには足りないとした。


■地検「判決文を精査」

 無罪判決を受け、和歌山地検は「長期間の審理に携わった裁判員の方々に敬意を表する。主張が受け入れられなかったことは残念。今後については、判決文の内容を精査し、上級庁と協議して適切に対応したい」とする花輪一義次席検事のコメントを出した。


■「しっかり話し合った」 裁判員の男性

 判決公判の後、裁判員を務めた20代の会社員男性が地裁で会見し「(公判が)長期間で、証人や証拠が多かったので、それらを吟味した上で判決を出すのに苦労したが、評議でしっかり話し合った。直接的な証拠がなかったので、中立の立場で、感情は切り離して考えた」などと語った。


■判決の要旨(抜粋)

○元妻が密売人から渡された物が本物の覚醒剤だったとは言い切れない
○野崎さんが誤って覚醒剤を過剰摂取した可能性を完全に否定できない
○多額の遺産を相続できることは動機になり得るが、殺害が強く推認されるものではない
○「完全犯罪」などの検索は、殺害を計画していなければあり得ないものではない



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