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「危ないものをなぜ売る!」苦情相次ぐ電動キックボード、未来はどうなる?販売店に聞く

普及が進む一方で依然、厳しい目を向けられる電動キックボード。果たして未来は…(写真はイメージ)
普及が進む一方で依然、厳しい目を向けられる電動キックボード。果たして未来は…(写真はイメージ)
 電動キックボードに依然厳しい目が向けられている。むしろ、普及に比例してその眼差しは増しているようにも見える。昨年夏、電動キックボードを含む特定小型原動機付自転車(以下、特定原付))の取り扱いを始めたカー用品店の大手オートバックスは、販売に際し「交通マナーの啓蒙と普及によって世間の目は変わるはず」と期待を寄せていたが、現在の実情や課題についてどう捉えているのか。同社に話を聞いた。

【画像】オートバックス購入層に人気の特定原付・自転車型とは?

■いまだ根強い”電動キックボード=悪”のイメージ…「地道なところからやるしかない」

「利用者人口は増え、普及が進んでいますが、”電動キックボード=悪”というイメージは続いていると感じています。販売から1年になりますが、現在もお客様から『こんな危ないものをどうして増やそうとするのか?』『普及させてどうするんだ!』など厳しいご意見をいただいています」(オートバックスセブンSX事業推進部 企画・推進課 鈴木弘樹さん/以下同)

 昨年8月、電動キックボードの販売を開始したオートバックスでは、賛否が分かれる同製品の取り扱いに際し、「交通マナーの啓蒙と普及によって世間の目は変わるはず」とし、購入者への交通マナー・ルールの啓蒙を積極的に行ってきた。ところが、同社が販売を開始してから1年経つ今も、交通ルールを無視した危険運転は後を絶たず、電動キックボードへの風当たりは厳しい。

「大前提として、当社では『試乗できる環境と知識を持ったスタッフがいる店舗でしか販売しない』というスタンスでやっています。販売以来、取り扱う全店舗で試乗サービスを行い、同時にルールの浸透などを促す啓蒙活動を行ってきました。当社以外の販売店の中には、その場で試乗できないお店もたくさんありますし、ネットで購入される方もいるので、実は、一度も車両に触ったことなく購入されるという方も意外と多い。当社では、ご購入の際には必ず交通ルールとマナーの動画を視聴いただき、チェックシートへの記入、注意事項の確認をしています」

 同社による対面の啓蒙活動のほか、シェアリングサービスも最初の登録時にテストがあり、それをクリアしないと利用できないようになっている。またネットで購入する場合も、動画などを見てルールやマナーを覚えられるようになっており、一応は学べる環境が用意されている。それでも、交通ルールを軽視したマナーの悪い運転がなくならない現状に、巷では「違反者には罰金を科して」といった声も挙がるが、電動キックボードにも道路交通法違反の罰金はある。

「やはり問題は、利用者だけでなく、厳しい目を向けている人たち自身も電動キックボードに対するルールやマナーを理解しきれていないことだと思います。解決策としては、足元からきちんと押さえていくこと。試乗会やイベントなどを通して、実際に見て触って、疑問点を解決していただく。そういう地道なところからやるしかないと思っています。車も昔はシートベルトが努力義務でしたが、後に義務化されて、その後ルールが浸透し、今はシートベルトをしていない人はいなくなりました。ルールやマナーを浸透させるにはある程度時間がかかるので、長い目で努力していかなければならないと思っています」

■「重心が安定するという安心感」特定小型原動機付自転車、購入層に人気なのは“座るタイプ”

 賛否が分かれる電動キックボードだが、昨年8月から特定小型原動機付自転車(特定原付)の取り扱いを開始したオートバックスの売り上げは順調に推移している。

「現在、北海道から九州まで全国31店舗で販売していて、今後も取り扱い店舗を拡大予定です。中には単月で10台ほど販売する店舗もあり、全体の販売台数としては昨年よりも伸びています。特定原付は”都心部中心”というイメージもありますが、意外とそういうわけでもなく、広島や四国といったエリアでも販売が進んでいます」(オートバックスセブンSX事業推進部 企画・推進課 鈴木弘樹さん/以下同)

 特定原付はキックボード型と自転車型(座って乗るタイプ)に大別されるが、同社では自転車型が人気で、販売数の7割前後を占めるという。

「自転車型は当初なかったのですが、販売開始の数ヵ月後に取り扱いを始めたら、こちらが伸びてきました。『電動キックボードは不安、怖い』と言った方も『自転車なら…』と受け入れていただきやすかったのだと思います。年配の方だと立って乗るのは辛いですし、座って乗った方が、重心が安定するという安心感もあるのではないでしょうか」

 特定原付の主な用途としては、主に3つが挙げられるという。

(用途1)通勤、通学に使う
(用途2)車に積んで運び、出先で使う
(用途3)工場、倉庫などで働く人がカート代わりに使う

「中でも、『車に積んで運び、出先で使う』用途が多いですね。キャンプ場や観光地などに行くと、駐車場が目的地から離れていることもよくあります。そこで、駐車場に車を停めてキックボードで目的地に移動する、という使われ方をしているようです」

 さらに、最近では、新たな可能性も見えてきたという。昨今、高齢ドライバーの「免許返納」問題も社会課題として扱われているが、免許を返納した後の移動手段として、特定原付の購入を検討する動きが出ているという。

■免許返納後の移動手段として特定原付が選択される可能性も?

「親御さんの免許返納を考えている50代のお客様から、特定原付の購入について相談を受けました。お客様の考えとしては、もし(親が)車に乗って暴走したら大事故になってしまう。だけど特定原付なら最大20km/hしか出ないので、車よりは大事故のリスクが少ないのではないかと。もちろん100%安全ではないですが、車よりは安全だろうという理由で検討されていたようです」

 免許返納後の移動手段のひとつにシニアカー(電動カート)があるが、最大6km/hしか出ないため、長距離移動に時間がかかり、また、1台50~60万円という高価格帯がデメリットとなっている。車種によっては10~20万円ほどで購入でき、さらに機動性に優れる特定原付にメリットを感じるのも自然の流れと言えそうだ。

「このような事情から、免許返納されたお客様が特定原付を選択される可能性はあると思います。現在、各メーカーさんもいろんなバリエーションを作ろうと開発中で、今後さらに高齢者向けのタイプも出てくると予想されます。お客様それぞれに考え方も生活スタイルも違いますし、正解は一つではないと思いますが、免許返納後に、特定原付によって快適なシニアライフが送れるお客様に対しては、しっかり提供していければ、と考えています」

 電動キックボードへの風当たりは依然強いが、この状況が続くと、シニア向け製品の開発自体が進まないなど、特定原付業界の発展そのものに悪影響が出ないか、と鈴木さんは不安視する。

「今は電動キックボードが叩かれやすい対象になっています。ただ前述した自転車型のように、特定原付が生活にハマる方がいらっしゃるのは事実です。機会があればご試乗頂き、ご自身の生活に合うか、実際のところ危険なのか、どうなのか、判断の材料としていただければと思います。ぜひ試乗をお待ちしております」

(取材・文/水野幸則)

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