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4神像のレプリカ制作 熊野速玉大社の国宝、和歌山工業校など協力

国宝に指定されている神像のレプリカを制作する取り組みで、表面をヤスリで磨く作業をする和歌山工業高校の生徒ら(和歌山県新宮市で)
国宝に指定されている神像のレプリカを制作する取り組みで、表面をヤスリで磨く作業をする和歌山工業高校の生徒ら(和歌山県新宮市で)
国宝・木造熊野速玉大神坐像(熊野速玉大社提供)
国宝・木造熊野速玉大神坐像(熊野速玉大社提供)
 和歌山県新宮市新宮の熊野速玉大社(上野顯宮司)が世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」登録20周年記念事業として、大社が所有する国宝に指定された4体の神像のレプリカ制作に取り組んでいる。盗難や災害などから守るための精巧な複製「お身代わり仏像(神像)」の制作で知られる和歌山工業高校(和歌山市)や県立博物館(同)などが協力。「日本を代表する神像彫刻の最高峰」とされる神像で、まずは年末までに1体を完成させたいという。


 速玉大社によると、レプリカを作っているのは、いずれも平安前期に作られた国宝の「木造熊野速玉大神坐像」(像高101・2センチ)、「木造夫須美大神坐像」(98・5センチ)、「木造家津御子大神坐像」(81・2センチ)、「木造国常立命坐像」(80・3センチ)。

 これらの神像は2005年12月、防災面などを考慮して速玉大社が県立博物館に寄託し、温湿度が管理された収蔵庫で保管されている。普段は目にすることができない状態であるため、「本物の存在感が感じられるようなレプリカを作りたい」と大社が和歌山工業高などに依頼し、今回の取り組みが実現した。

 今年1月、同校産業デザイン科の3年生が県立博物館を訪れて4体の神像を3Dスキャナーによって計測し、データを準備した。像のサイズが大きいことから専門業者に委託し、3Dプリンターを使って樹脂による実物大の像が出来上がったが、引き続き、制作過程でできた表面の細かな溝をやすりで磨いて滑らかにしたり、木目や模様などを着色したりする作業が必要という。

 産業デザイン科の2年生6人がこのほど、速玉大社を訪れ、手作業でレプリカの表面を磨いた。参加した岩淵唯さん(16)は「初めての体験で緊張もしたけど頑張った。完成が楽しみ」と笑顔。同科の児玉幸宗教諭は「重要文化財のレプリカは経験があるが国宝は初めて。このような機会を頂きありがたい」と話した。

 大社によると、着色作業は10月下旬から始める予定。神道芸術家で大社職員でもある平野薫禮さん(新宮市)が中心になり、地元の子どもらにも参加してもらうことを計画している。

 上野宮司(71)は「国宝のレプリカ制作にはいろんなハードルがあって今までなかなかできなかったが、多くの方々のご協力で悲願がかない、大変ありがたい。新しい技術と多くの人々が携わることで文化財の保護意識をより広めていく一助になる」と話している。

 今後、まずは年末までに熊野速玉大神坐像を仕上げ、大社で公開。28年に迎える創建1900年の節目には残り3体も完成させる予定。

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