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熊野・新宮を詠み連ねる 作家の辻原さんらが「歌仙」

歌仙を披露する歌人の永田和宏さん(左)と作家の辻原登さん(中央)、俳人の長谷川櫂さん=24日、和歌山県新宮市で
歌仙を披露する歌人の永田和宏さん(左)と作家の辻原登さん(中央)、俳人の長谷川櫂さん=24日、和歌山県新宮市で
 和歌山県新宮市の佐藤春夫記念館の開館30周年を記念し、印南町出身の芥川賞作家・辻原登さん(73)と歌人・永田和宏さん(72)、俳人・長谷川櫂さん(65)が、熊野・新宮をテーマにした歌仙(連句)を披露する催し「熊野・新宮で歌仙を巻く!!」が24日、同市内であった。約130人が来場し、3人の巧みな言葉のキャッチボールを楽しんだ。

 歌仙は2人以上の詠み手が、五七五の長句と七七の短句を互いに詠み連ねていく一種の連想ゲームで、計36句で成立。歌仙を詠むことを「巻く」という。

 催しは公益財団法人佐藤春夫記念会と新宮市教育委員会の主催で、紀伊民報などが協力。3人は今年、共著「歌仙はすごい」(中公新書)を出版しており、辻本雄一館長(74)が出演を依頼して実現した。3人は9月から、互いに電話やファクスで連絡を取り合いながら歌仙を巻き、「新宮、冬怒濤(どとう)の巻」として、この日発表した。

 最初に、永田さんが「相手が出した句の次に、どんな句を付けるかにその人の個性が出る。とても楽しい時間を過ごすことができる」などと歌仙の魅力を紹介し、発句(最初の句)として「懐かしき面子そろひぬ冬怒濤」を披露した。

 続いて、辻原さんは「新宮で歌仙を巻くことが僕の夢だった」と述べ、次の句「しぐるる空を八咫烏(やたがらす)飛ぶ」を紹介するなど、それぞれが句に込めた思いを紹介しながら披露した。

 このほか「昭和なり全線開通紀勢線」(辻原さん)、「ゴトビキ岩も揺れて寿(ことほ)ぐ」(長谷川さん)など熊野・新宮ならではの句も披露されたほか、来場者も即興で歌仙に挑戦。「挙句(あげく)」(最後の句)として、長谷川さんが、役者が退場した能舞台の上に歌仙が一巻残されているイメージで詠んだという「松のみどりに歌仙一巻」を披露して締めくくった。

 永田さんは「歌仙は自分でやってみるのが一番面白い。ぜひ、チャレンジしていただければ」と呼び掛け、辻原さんも「実に見事な歌仙が新宮で巻き上がった」と話した。

 この日、披露された歌仙は佐藤春夫記念館で展示する予定。

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