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里山守り紀州備長炭製造 みなべ町の原さんが県の名匠に

県の名匠に選ばれた原幸男さん(和歌山県みなべ町清川で)
県の名匠に選ばれた原幸男さん(和歌山県みなべ町清川で)
 和歌山県みなべ町清川の製炭士、原幸男さん(83)が、伝統工芸や生活用品の製作技能を持ち、文化向上に功績のある人を表彰する県名匠に選ばれた。木炭の最高傑作と評される「紀州備長炭」を67年間にわたって作り続け、同時に炭の原木を絶やさない持続可能な「山づくり」に取り組んでいることが評価された。


 原さんは、みなべ町と田辺市にまたがる虎ケ峰にほど近い同町清川の名之内地区で生まれ、今も住んでいる。製炭は中学校を卒業してすぐ、父親から習った。製造するのは技術が要る白炭の備長炭。江戸期の炭問屋、備中屋長左衛門が名付け、江戸で評判になったといわれ、製炭技術が1974年に県の無形民俗文化財に指定された。

 この炭を焼くのに、昔ながらの小型の窯を使っている。今は、大量に焼くのに大型が主流となっているが、小型は温度管理がしやすく炭の質が安定するというメリットがある。さらに、原木を確保するために木を全て切るのではなく、太い幹を選んで切る「択伐」を続けるうえで、最適だという。

 しかし、小型は焼くのに技術が要る。内部が熱くて中に入れないため、原木を立てて並べるためには、外から長い棒を使ったり、原木を放り投げたりしなければいけない。「はね木」「ほおり木」と呼ばれる伝統的な手法である。「父親が任せてくれるまで5、6年かかった。自信が持てるまでには10年かかった」と修業時代を振り返る。

 窯から立ち上がる煙のにおいや様子から、炭化具合を見極める熟練の技も必要。「これらのやり方は江戸期から変わらない。センスも必要だが、自分にあるとは思わなかったので努力で頑張ってきた」と語る。

 択伐も江戸時代から続く、伐採の仕方。すべて切れば次に切れるまで40年以上かかるが、択伐なら15年ほどに短縮できる。山の荒廃を防げるが、伐採する木を見極める知識が必要だ。それが評価され、2015年には公益社団法人国土緑化推進機構が主催する「森の名手・名人」の森づくり部門で、択伐技術の名人に認定されている。

 山づくりの講座ではアドバイザーを務める。息子で3代目の正昭さん(50)とともに「炭作りで重要なのは山づくり」という先人から継承した思いを伝える。

 今回、県の名匠に選ばれことについて「長年続けてきた褒美として頂けたと思う。とても光栄」と喜ぶ。紀州の里山の守り人として、これからも後継者の育成に尽力したいという。

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