和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2021年10月20日(水)

追加登録を歩く~新しい世界遺産~(5) 新田平見道・富山平見道・飛渡谷道 昔の面影残す海岸の峠道

約200メートルにわたって石畳が続く富山平見道。谷の丸い石が使われている(串本町田子で)
約200メートルにわたって石畳が続く富山平見道。谷の丸い石が使われている(串本町田子で)
 海岸線に沿う大辺路は枯木灘を望み、場所によっては雄大な眺望の広がる熊野古道である。明治以降、道路や鉄道の整備でかなり消えているが、峠道を中心に往時の姿が残っている。「熊野古道大辺路刈り開き隊」代表の上野一夫さん(68)の案内で、串本町の和深から有田まで、いくつかの峠を越えて歩いた。

 出発点は和深駅。集落を抜け、小さな峠を越えると舟並漁港に着いた。そこからまた舗装道を歩き、林間の坂道を上っていくと丘にたどり着いた。「新田平見」である。視界が開け、海を望む。集落ではかつて、芋や麦の栽培が盛んだったという。その畑のほとんどは雑草が生え、廃屋も目立ち、寂しげだ。

 そこから昔のままの古道が続く。道沿いでホウロクイチゴの大きな葉が目に入った。この地の郷土料理である「押しずし」の材料だ。ここは祖母の里で、子どもの頃に食べた懐かしい思い出がよみがえってきた。

 すぐに坂の傾斜が強くなり、そこから約50メートルにわたって石畳や石段が続く。こけむしており、大辺路で一番きれいに残る石畳だろう。

 坂を下り終えると谷川が流れ、石垣が続いていた。かつての田んぼの名残である。

 次の丘「安指平見」には大師堂があった。弘法大師信仰はこの地でも広がっており、巨大魚「おおな」の伝説も残る。以前、イベントで見たイシナギの大きさに驚いたことを思い出した。

 大小二つの島からなる「双島」を眺めながら海岸沿いを歩き、造船所の横から「富山平見」に向けて峠道に入った。所々で崩れてはいるものの約200メートルにわたって石畳が続く。新田平見の石は角張っているが、ここの石は谷から拾ってきたために丸いのだという。辺りに広がるウバメガシ林にも目を奪われた。

 再び国道に出る。今度は海岸に下りて砂浜や磯を歩いた。辺り一面、真っ白で、よく見るとサンゴの破片が堆積している。これは壁塗りの材料になり、かつて財を成した人もいたそうだ。

 田並川に架かる橋を渡り、坂を上った。「飛渡谷」と呼ばれる谷川に沿った古道で、ここも石畳が続き、照葉樹林が広がる。海の眺めを楽しみながら坂を下ると有田集落にたどり着く。道中は約14キロ、所要時間は約5時間。秋とはいえ照りつける日差しは強く、潮風が心地よかった。
(山本敏弘)