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2024年12月23日(月)

追加登録を歩く~新しい世界遺産~(2)長尾坂・潮見峠越 田辺湾一望の景勝地

潮見峠越の「捻木の杉」周辺からは、田辺湾を一望することができる(田辺市上野で)
潮見峠越の「捻木の杉」周辺からは、田辺湾を一望することができる(田辺市上野で)
 熊野古道中辺路の潮見峠越は、田辺市の三栖方面から左会津川をさかのぼり、長尾坂や潮見峠を経て同市中辺路町栗栖川に至る。室町期以降、熊野三山への近道として頻繁に利用された。「潮見峠」の名は本宮へ向かう人にとっては最後に、本宮からの旅人には最初に海を望む景勝地であったことに由来するという。

 地域学習で古道について学んでいる長野小学校6年生、寛座マリアさん(11)に「語り部」になってもらい、父・真吾さん(48)、長野地域の那須豊平町内会長(67)と一緒に歩いた。

 上三栖の県道沿いにある「熊野古道中辺路(長尾坂下)」と記された道標から出発。長尾坂は上三栖から長野の水呑峠に至る約3キロの坂道のことで、このうち約500メートルが世界遺産になった。

 見どころの一つはこけむした石畳である。復元されたものが多いが、一部に江戸末期の石畳が現存する。坂の途中には一里塚跡があり「昔は松の大木があり、旅人がよく一休みしたそうです」とマリアさん。

 栽培が盛んな梅やミカンの畑を縫うような狭い道を抜けると、県道と合流した。

 道沿いに熟れたアケビが実っている。そばに「ご自由にお取り下さい」との札。おもてなしの心が光る。

 道標に従って坂道を上ると左手に海が見え始め、やがて水呑峠(標高約370メートル)近くの休憩所「ひるね茶屋」に到着。田辺湾が一望でき、思わず時を忘れた。

 水呑峠から1・3キロほど歩くと捻木の杉。安珍と清姫の悲恋伝説にちなむ巨木である。ここからが世界遺産に登録された熊野古道「潮見峠越」(約1・8キロ)となる。

 熊野に参詣した安珍が約束を破って逃げ、追い掛けた清姫が悔しさの余り杉の枝をねじったという伝説をマリアさんが説明。「安珍は嫌いです」と付け加えた姿がほほ笑ましかった。

 さらに30分ほど、人工林の中を通る古道を歩き、目的地である「潮見峠」にたどり着いた。腕時計を見ると正午。午前9時から歩き始めて3時間がたっていた。

 昼食に用意した梅干しおにぎりをほお張る。酸っぱさが疲れた身体に心地良い。梅干しは地元・長野産。このルートは、世界遺産と昨年12月に認定された世界農業遺産「みなべ・田辺の梅システム」が交わる地域でもあった。(牧康宏)