和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2024年11月21日(木)

コロナ危機 私たちにできること(1)/田辺保健所長 和田 安彦さん(59)/正しく恐れて

わだ・やすひこ=医学博士、専門は公衆衛生。2017年度から田辺保健所長。
わだ・やすひこ=医学博士、専門は公衆衛生。2017年度から田辺保健所長。
 新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、緊急事態宣言が和歌山県を含む全47都道府県に発令されて2週間が経過した。日常生活を揺るがす危機を前に、私たちにできることは何か。各分野の専門家に聞いた。


 ――新型コロナウイルスはどの程度感染力がありますか。

 田辺保健所管内でも感染者が出ましたが、二次感染には至っていません。他者への感染は換気が悪く、人が密集して不特定多数と接触する場合に起きやすいようです。

 重症急性呼吸器症候群(SARS)のように重症化することが少ないですが、そのため軽症で感染の自覚がない人が、歩き回って感染を広げる傾向がある。巧妙なウイルスです。

 ――どうすれば感染を防げますか。

 ウイルス感染の二大要因は、接触と飛沫(ひまつ)です。不特定多数が触れるドアノブやスイッチなどにはウイルスが付着している可能性がある。触れた手で目や鼻、口もとなどを触ると危険です。

 基本の対策は手洗い。せっけんの成分にはウイルスを除去、分解する作用があります。アルコール消毒がなくても、こまめに手を洗えばいい。

 飛沫はせきやくしゃみだけでなく、普通の会話などからも発生します。マスクには自分からの飛沫を抑える役割があります。人との接触を避け、距離を取ること。外出は控え、できる人は在宅勤務してもらいたい。

 ――いま、私たちがすべきことは何でしょうか。

 新型コロナを正しく恐れることです。感情的にならず、理性的になりましょう。感染者への中傷、差別はやめてください。感染者が悪いわけじゃありません。今や誰もが感染者になる可能性がある。もし、感染者が中傷を恐れて行動履歴を明かせなかったり、症状を訴えられなかったりしたら、感染はますます広がってしまいます。

 ――医療崩壊の心配はありませんか。

 現状では何とか対応できています。新型コロナは症状での判定が難しく、行動履歴の確認が重要です。万一に備え、最低2週間の行動履歴を残しておいてほしい。いまはアプリでも記録できますし、レシートなどを取っておくのも有効です。それが現場の助けになります。

 (聞き手は喜田義人)