和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2025年04月01日(火)

「写真家の藤森さん死去」

 日本を代表する写真家の一人、土門拳の直弟子で、仏像の写真撮影をライフワークにしていた写真家、藤森武さん(埼玉県在住)が亡くなった▼1942年、東京都の生まれ。田辺市内の写真館店主と写真学校の同期だったという縁でたびたび当地を訪れていた▼私が初めて藤森さんにお目に掛かったのは2017年。田辺市立美術館で開かれた展示会「熊谷守一―書と絵と肖像」で藤森さんの講演を聴いた▼「画壇の仙人」とも呼ばれた守一は写真嫌いだった。藤森さんは熊谷の自宅に3カ月間通い詰めて撮影の許しを得て、晩年の3年間に約3千枚を撮った。作品は写真集「独楽 熊谷守一の世界」に収録され、そのうち20点が美術館に展示された▼次にお目に掛かったのは翌18年。田辺・弁慶映画祭で守一の生き方を描いた作品「モリのいる場所」(沖田修一監督)が上映され、ゲストとして来演した。紀南文化会館大ホールで開かれたトークショーでご一緒し、守一の人柄や写真撮影のエピソードなどを伺った▼その後、藤森さんを熊野本宮大社に案内した。九鬼家隆宮司との懇談では大社の御神像が話題になり、藤森さんは撮影に意欲を示していたがかなわなかった。ご冥福をお祈りします。(長)