和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2025年03月29日(土)
提供:
配信記事やプレスリリースは、配信・発表元による原稿をそのまま掲載しています。 お問い合わせは各情報配信・発表元に直接お願いします。

2025年大阪・関西万博における高精度気象予測情報の提供に向け連携を開始

来場者等へ、2台のMP-PAWRと「富岳」を活用した予測情報を提供し、 ゲリラ豪雨による危険回避を促進

2025年3月26日
国立研究開発法人情報通信研究機構、国立大学法人大阪大学
国立研究開発法人防災科学技術研究所、株式会社Preferred Networks
国立研究開発法人理化学研究所、株式会社エムティーアイ

 国立研究開発法人情報通信研究機構(理事長:徳田 英幸、以下「NICT」)、国立大学法人大阪大学(総長:西尾 章治郎、以下「大阪大学」)大学院工学研究科、国立研究開発法人防災科学技術研究所(理事長:寶 馨、以下「防災科研」)、株式会社Preferred Networks(代表取締役最高経営責任者:西川 徹、以下「PFN」)、国立研究開発法人理化学研究所(理事長:五神 真、以下「理研」)、株式会社エムティーアイ(代表取締役社長:前多 俊宏、以下「エムティーアイ」)は※1、2025年4月から開催される大阪・関西万博において、来場者等への高精度気象予測情報の提供に向けて、6者連携を開始します。
 豪雨の卵を早期に検知することが可能な次世代気象レーダ「マルチパラメータ・フェーズドアレイ気象レーダ(以下「MP-PAWR」)※2」と、豪雨の規模や位置を正確に予測するスーパーコンピュータ「富岳」※3を用いた高精度気象予測を組み合わせ、気象予測情報の精度の向上を図るとともに、ゲリラ豪雨による危険回避を目指した実証を行います。「富岳」を使用した豪雨予測は万博開催期間中の約1カ月間のみ実施されます。
 本取り組みは、「2025年大阪・関西万博アクションプラン※4」の一つである「リモートセンシング技術による高精度データの解析及び​リアルタイム配信の実証(総務省)」に基づいています。

取り組みの背景
 近年、短時間での大雨の年間発生回数は統計的に有意に増加しており、強度の強い雨ほど増加率が顕著です※5。このような短時間に局地的・突発的に降るゲリラ豪雨による被害を減らすためには、豪雨の卵を早期に検知して豪雨の規模や位置を正確に予測することで、安全に係る情報を適時適切に生活者に提供することが求められています。この課題に取り組むため、雨雲を最短30秒間隔で高精度に三次元立体観測ができる次世代気象レーダMP-PAWRが開発されました。
 MP-PAWRは、上空まで密に雨雲を観測できるため、上空の豪雨の卵を検知することが可能です。一方で、MP-PAWRに限らず気象レーダの近くで強い雨が降っている場合、レーダの電波が雨粒で減衰する「降雨減衰」により、後方の雨が正しく観測ができない場合があります。また、MP-PAWRは高精度な三次元観測により膨大な観測データを生み出すため、研究機関等へのデータの配信に課題がありました。
 2023年から関西で2台のMP-PAWRが稼働を開始したことで、異なる方向からの雨雲観測により「降雨減衰」の解消が可能になりました。さらに、捉えた高精度な三次元観測データを圧縮・配信するプラットフォーム「きゅむろん※6」が開発されたことで、研究機関や気象情報を扱う事業者に迅速にデータを配信し、いち早く生活者へゲリラ豪雨の危険性を通知することが可能になりました。

大阪・関西万博での実証概要
<実証内容>
 2025年4月から開催される大阪・関西万博では、2台のMP-PAWRを活用し、万博会場を含む関西の特定エリアの積乱雲等を同時観測します。観測には、兵庫県神戸市のNICT未来ICT研究所と、大阪府吹田市の大阪大学吹田キャンパスに設置されたMP-PAWRを使用します。観測されたデータは、防災科研が開発した高精度な三次元雨量推定技術を適用し、PFNが開発したデータ圧縮・配信プラットフォーム「きゅむろん」を通じて、圧縮された状態で理研及びエムティーアイに配信されます。
 この観測データを基に、エムティーアイが運営するゲリラ豪雨検知アプリ「3D雨雲ウォッチ」にて雨雲の3D表示と、豪雨予測のPush通知を行います。 Push通知には、NICTが開発したMP-PAWRの観測データから学習させた独自のAI豪雨予測(AIナウキャスト)も含まれます。
 また、理研は、大阪・関西万博開催中の一部期間において、スーパーコンピュータ「富岳」を用いた気象予報モデルに世界で初めて※7 2台のMP-PAWRの観測データを同化し、リアルタイムで豪雨予測を行います。「富岳」で予測される雨雲の様子は、「3D雨雲ウォッチ」と理研のホームページで配信され、「3D雨雲ウォッチ」では最大30分先の豪雨予測をPush通知でお知らせします。

<「3D雨雲ウォッチ」によるPush通知内容>
【2台のMP-PAWRの同時観測による豪雨予測】
●通知内容
30mm/hを超える豪雨の可能性を通知
●通知時間
最大15分~20分前に豪雨の可能性を通知
●通知エリア
吹田MP-PAWR観測範囲:大阪府吹田市を中心とした半径80km領域
神戸MP-PAWR観測範囲:兵庫県神戸市を中心とした半径80km領域

【「NICT AIナウキャスト」を使用した豪雨予測】
●通知内容
30mm/hを超える豪雨の可能性を通知
●通知時間
最大5分~10分前に豪雨の可能性を通知
●通知エリア
吹田MP-PAWR及び神戸MP-PAWRの観測範囲内

【「富岳」を使用した豪雨予測】
●通知内容
30mm/hを超える豪雨の可能性を通知
●通知時間
最大30分前に豪雨の可能性を通知
●通知エリア
吹田MP-PAWR観測範囲:大阪府吹田市を中心とした半径80km領域
神戸MP-PAWR観測範囲:兵庫県神戸市を中心とした半径80km領域

【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202503256232-O1-TqiSpP3W
アプリ「3D雨雲ウォッチ』で確認できる雨雲イメージ
※画像は関東に設置されたMP-PAWRで雨雲を観測した様子

<実証期間>
大阪・関西万博の全期間中2025年4月13日(日)~10月13日(月)
※「富岳」を使用した豪雨予測は2025年8月5日(火)~8月31日(日)の27日間(予定)

【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202503256232-O4-Q5v5NTk3

 
各機関の役割
NICT
・MP-PAWRの運用
・MP-PAWRデータを機械学習させたAI予測情報の提供
大阪大学大学院工学研究科
・MP-PAWRの運用
防災科研
・MP-PAWRデータを用いた三次元雨量推定技術の提供
PFN
・「きゅむろん」によるMP-PAWRデータの圧縮復元を用いた転送
理研
・スーパーコンピュータ「富岳」によるデータ同化と、30分後の気象予測
・ホームページを通して、博覧会協会や来場者等に予測結果を提供
エムティーアイ
・ゲリラ豪雨検知アプリ「3D雨雲ウォッチ」上で、MP-PAWR 2台の観測データ・「富岳」の予測データを3D描画、豪雨の危険性をPush通知
・アプリを通して、博覧会協会や来場者等に予測結果を提供

※1 本リリースにおける各機関の並び順は、順不同。
※2 「マルチパラメータ・フェーズドアレイ気象レーダ(MP-PAWR)」:フェーズドアレイ気象レーダにマルチパラメータ(二重偏波)機能を追加することにより、高速三次元観測性能を保ちつつ、雨量の計測精度を格段に向上させたレーダ。
https://www.nict.go.jp/press/2017/11/29-1.html
※3 スーパーコンピュータ「富岳」:社会的・科学的課題の解決で日本の成長に貢献し、世界トップレベルの成果を生み出すことを目的に開発された。
https://www.r-ccs.riken.jp/fugaku/about/
※4 「2025 年大阪・関西万博アクションプラン」の詳細:P.73
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/expo_suisin_honbu/pdf/apver7_kohyou.pdf
※5 気象庁「大雨や猛暑日など(極端現象)のこれまでの変化」より https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/extreme/extreme_p.html
※6 「きゅむろん」:MP-PAWRが取得する観測データを圧縮・配信するプラットフォーム。 https://cumulon.jp/
※7 2025年3月時点 理化学研究所調べ

研究支援
 本研究は、スーパーコンピュータ「富岳」政策対応利用課題「『富岳』を活用したリモートセンシング技術による高精度データの分析技術及びリアルタイム配信の実証」(研究代表者:井出真司、課題番号:hp240374)、HPCI システム利用研究課題「マルチスケール極端気象予測を目指した「ビッグデータ同化」とAIの融合研究」(研究課題代表者:三好建正、課題番号:hp240061)、「マルチスケール極端気象予測を目指した「ビッグデータ同化」の研究」(研究課題代表者:三好建正、課題番号:hp230094)を通じて、理化学研究所が提供するスーパーコンピュータ「富岳」の計算資源の提供を受け、実施しています。データ配信プラットフォーム「きゅむろん」は、総務省ICT重点技術の研究開発プロジェクト(JPMI00316)「リモートセンシング技術のユーザー最適型データ提供に関する要素技術の研究開発」(R4~R6年度)の支援を受け開発されました。



プレスリリース詳細へ https://kyodonewsprwire.jp/release/202503256232
提供: