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2024年12月24日(火)

【M-1】“人生”背負う審査員たちの覚悟 9人体制で多彩な評価軸に【採点一覧】

『M-1グランプリ2024』の審査員9人(C)M-1グランプリ事務局
『M-1グランプリ2024』の審査員9人(C)M-1グランプリ事務局
 漫才日本一決定戦『M-1グランプリ2024』(ABCテレビ・テレビ朝日系 後6:30)が22日に行われ、令和ロマンが20代目王者に決定。2年連続でのトップバッターで、前人未到となる連覇で、過去最多1万330組の頂点に立ち、“日本一”の称号と賞金1000万円を手にした。劇的な展開を審査したのは、若林正恭(オードリー)、礼二(中川家)、山内健司(かまいたち)、塙宣之(ナイツ)、博多大吉(博多華丸・大吉)、哲夫(笑い飯)、柴田英嗣(アンタッチャブル)、海原ともこ(海原やすよ・ともこ)、石田明(NON STYLE)の9人。2015年以来となる、9人体制がどのような影響を与えたのか、採点とコメントから探りたい。

【写真】喜びの瞬間!激闘の末、敗者復活を制したのはマユリカ

■審査員たちの覚悟にじむ言葉 若林「『M-1』に人生救ってもらった」

 2001年のスタート時から基本的な形となっていた「7人審査員制」から変更し、歴代王者が審査した2015年以来の「9人審査員制」を採用、松本人志(ダウンタウン)、山田邦子、富澤たけし(サンドウィッチマン)が今年は担当せず、人数の増加などに伴い、若林、山内、柴田の初審査員に加えて、石田、哲夫が2015年以来の参戦を果たした。席順は、左から大吉、塙、哲夫、若林、石田、山内、柴田、ともこ、礼二という並びになった。

 審査員登場時のあいさつで、多く飛び出したワードは“人生”。ともこが「みんなも緊張するっていうから、うつってきて。柴田くんが『人生決まるしな』とか、いろいろ言ってくるんです(笑)」とイジれば、柴田もそれを受ける形で「ともこさんがおっしゃった通り、『M-1』は人生変わりますし。みなさんの人生かけたネタ、私もきょうは楽しみにしております」と呼びかけた。

 松本と同じく『キングオブコント』と『M-1』の審査員をともに務める形となった山内は「すごく光栄なことで、やはりあしたから若干態度が横柄になりそう」とニヤリ。石田は「2008年の『M-1』で優勝させてもらったんですけど、その時の上位4組(NON STYLE、オードリー、ナイツ、笑い飯)がここに並んでいると。すごくうれしいんです。僕も人生変えてもらったんで、きょう誰かの人生が変わると思うとドキドキしています」と喜びをかみしめ、若林は「初めて漫才に点数つけてみるんですけど。2008年の敗者復活では最後(の出番で)、現場に30分くらいしかいられなかったので、きょうは頭からいられてうれしいです。『M-1』に人生救ってもらったんで、一生懸命審査します」と言葉に力を込めるなど、審査員たちの覚悟のほどが感じられた。

■令和ロマン2年連続トップバッターの衝撃 バッテリィズの“不意打ち”も爆発

 令和ロマンが、2年連続でトップバッターという劇的な幕開けとなったが、採点やコメントを見てみると、審査員にとっても衝撃的だったと言える。全員が90点以上をつける高評価で、石田が「トップ出番で、この後まだまだ出てくるので、高得点ってつけにくいんですけど、これだけ無駄もなく、あるあるを題材にしながらも話術でこんなに…まんまと落とし穴に入れられていくみたいな。これは点数入れざるを得なかった」、礼二も「完全に去年超えてますよね。トップじゃない空気ですから。この1年通して、またレベルが上がった」とうなった。

 令和ロマンの興奮も冷めやらぬ中、昨年準優勝のヤーレンズが2番手で登場し、堂々の漫才で魅了したが、惜しくも令和ロマンを捉えることはできなかった。楢原真樹が、ボケを挟みながらトークする中、ともこが「聞いてくれます?」と呼びかけながら「なんか、もっとしょうもないの見たかったです。なんか…もっと」と、言葉にできない部分を身振りを交えて熱弁。礼二の言葉を受けて「そういう事が言いたかった!」と割って入るなど、飾らない言葉でファイナリストたちを激賞する姿は、上沼恵美子を彷彿とさせた。

 9人の審査員中6人が最高点をつけたバッテリィズも、大きなインパクトを与えた。エースの言葉に、審査員たちも大笑いする姿が見られた。97点をつけた石田が「ボケがくるタイミングがわからへん、角度も全然わからへんから、笑う準備ができへん間に笑かされるというか。ダイタクとか、ジョックロックとか笑うタイミングがわかりやすいのが続いていたのが、不意打ちを全部食らってしまったのが功を奏した」と賛辞を送った。

 95点をつけた若林も「小難しい漫才が増えてくる時代の中で、なんかワクワクするバカが現れたなと(笑)。日本を明るくしてくれそうで。寺家さんが、漫才のリズムをキープする腕も確かだなと思いました」と絶賛。96点をつけた柴田も「こんなクリティカルなアホ、初めて見た。あれだけ文句を言っておいて、ちゃんと謝れるというところがすばらしかった。漫才の妙みたいなところもありました」と評価を寄せた。

■最終決戦で大いに苦悩「今年が一番」 令和ロマンの“気迫”に軍配

 最終決戦では、バッテリィズ、令和ロマン、真空ジェシカという多彩な顔ぶれが並んだ。それだけに、審査員も大いに悩み、若林が「それぞれの武器でハイレベルなんで、決めるのが難しい。まだ迷ってますね」とコメントし、礼二も「まだ決めてません」と笑顔。塙も「ちょっと、今年が一番悩んでます」と苦悩をのぞかせた。最後に投票したのは、礼二:バッテリィズ、ともこ:令和ロマン、柴田:令和ロマン、山内:令和ロマン、石田:令和ロマン、若林:バッテリィズ、哲夫:バッテリィズ、塙:真空ジェシカ、大吉:令和ロマンで、令和ロマンが5票、バッテリィズが3票、真空ジェシカが1票という結果になった。

 すべての審査を終え、礼二は「まさかの2連覇、すばらしい」、ともこも「もうすごかったですね。出てきた時から、空気がすごかった」。柴田が「もう出たくないと言っていますけど、何連覇するか楽しみ」と笑わせると、山内は「令和ロマンは1本目がしゃべくり漫才、2本目が漫才コントで、漫才のスタイルも変えてきて、1本目より2本目の方が爆笑の渦に巻き込んでいたのが、圧巻でした」と高評価を寄せた。

 石田は「全組違う良さがあって、いい戦いやなと思ったんですけど、令和ロマンが忙しい中、2本目こんなに仕上げてくるという、気迫にも近いようなものを感じた」としみじみ。若林が「史上初の連覇を見られて、初めて参加しましたけど、この大会でよかったです」とやさしく呼びかけると、哲夫も「今回も令和ロマンがトップバッターでやったじゃないですか?それだけのインパクトを残して優勝ですから、すごいな」と圧倒された様子で話した。

 塙は「真空ジェシカを令和ロマンに変えてもいいですか(笑)?すばらしかったです」とボケを挟んだコメント。最後は、大吉が「この1年間のチャンピオンとしての自信が、ネタに詰まっていて、すごかったです。とんでもない漫才を2年連続で見せてくれて、ありがとうございました」と締めくくった。『M-1』という、スケールの大きな大会の規模感ゆえに「審査員も審査される」という様相を呈しており、特に今回は大きな改革も行われたため、審査員たちへの負担もあっただろう。そんな中、それぞれの視点から点数をつけ、コメントを寄せることで、令和ロマンの連覇という結果ではあったものの、各審査員たちの最高点と最低点を見てみると、多彩な評価軸があるように感じる。ファイナリストはもちろん、審査員たちの存在によっても、確実に去年とはまた違った魅力にあふれる大会になっていた。

■審査員9人の採点一覧
【礼二】(最高…バッテリィズ:97点、最低…トム・ブラウン:89点)
令和ロマン:93点 ヤーレンズ:90点 真空ジェシカ:94点 マユリカ:91点 ダイタク:92点 ジョックロック:93点 バッテリィズ:97点 ママタルト:93点 エバース:96点 トム・ブラウン:89点

【海原ともこ】(最高…令和ロマン、バッテリィズ:97点、最低…ママタルト:92点)
令和ロマン:97点 ヤーレンズ:94点 真空ジェシカ:95点 マユリカ:96点 ダイタク:94点 ジョックロック:95点 バッテリィズ:97点 ママタルト:92点 エバース:94点 トム・ブラウン:94点

【柴田英嗣】(最高…バッテリィズ:96点、最低…トム・ブラウン:87点)
令和ロマン:95点 ヤーレンズ:91点 真空ジェシカ:94点 マユリカ:89点 ダイタク:88点 ジョックロック:88点 バッテリィズ:96点 ママタルト:89点 エバース:93点 トム・ブラウン:87点

【山内健司】(最高…真空ジェシカ:97点、最低…マユリカ、トム・ブラウン:90点)
令和ロマン:96点 ヤーレンズ:91点 真空ジェシカ:97点 マユリカ:90点 ダイタク:92点 ジョックロック:93点 バッテリィズ:96点 ママタルト:93点 エバース:94点 トム・ブラウン:90点

【石田明】(最高…バッテリィズ:97点、最低…トム・ブラウン:88点)
令和ロマン:96点 ヤーレンズ:92点 真空ジェシカ:95点 マユリカ:91点 ダイタク:90点 ジョックロック:89点 バッテリィズ:97点 ママタルト:90点 エバース:96点 トム・ブラウン:88点

【若林正恭】(最高…バッテリィズ:95点、最低…ママタルト:89点)
令和ロマン:94点 ヤーレンズ:92点 真空ジェシカ:93点 マユリカ:91点 ダイタク:92点 ジョックロック:90点 バッテリィズ:95点 ママタルト:89点 エバース:94点 トム・ブラウン:93点

【哲夫】(最高…バッテリィズ:95点、最低…マユリカ:88点)
令和ロマン:90点 ヤーレンズ:91点 真空ジェシカ:90点 マユリカ:88点 ダイタク:89点 ジョックロック:91点 バッテリィズ:95点 ママタルト:89点 エバース:93点 トム・ブラウン:92点

【塙宣之】(最高…トム・ブラウン:95点、最低…ママタルト:89点)
令和ロマン:93点 ヤーレンズ:92点 真空ジェシカ:94点 マユリカ:91点 ダイタク:93点 ジョックロック:91点 バッテリィズ:93点 ママタルト:89点 エバース:94点 トム・ブラウン:95点

【博多大吉】(最高…真空ジェシカ:97点、最低…ママタルト:88点)
令和ロマン:96点 ヤーレンズ:92点 真空ジェシカ:97点 マユリカ:93点 ダイタク:90点 ジョックロック:89点 バッテリィズ:95点 ママタルト:88点 エバース:94点 トム・ブラウン:95点

『M-1グランプリ2024』決勝進出・出場者(ファイナリスト)一覧
『M-1グランプリ』歴代審査員・司会/MC一覧
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提供:oricon news