【関西スタートアップ112社の調査結果発表】関西スタートアップの7割は、現在の事業に満足。
NPO法人 生態会
設立間もない企業は、満足度が低い傾向。売上が多いと、満足度は高まる東京と比べて関西で事業を行う上での困難は、「採用」「資金調達」「他の起業家との出会い」「知名度向上」
NPO法人生態会(所在地:大阪府大阪市北区、理事長:アレン・マイナー)は、関西のスタートアップの成功や失敗、課題を可視化することを目的に、2024年10月3日~26日にスタートアップにインターネット調査を行い、112社から回答を得ました。その結果の一部を、発表します。調査対象は、現在関西に本社がある(110社)・過去に関西に本社があったスタートアップ(2社)です。
【背景】当法人は、関西の起業エコシステムの活性化を目指して、2018年11月に設立されました。関西のスタートアップを取材・調査し、概要やリストを集めた『関西スタートアップレポート』の発行、起業相談・イベント・マッチングなどを行っています。スタートアップ取材は200社を超え、紹介ブログは関西最大級のスタートアップメディアです。昨今、国の施策もありスタートアップが注目を得て、華々しいストーリーが紹介されています。しかし、関西のスタートアップにとって現状はどうか、課題は何かを理解し、起業環境の改善強化を進めるために、調査を実施しました。なおこの調査は、20号記念となる『関西スタートアップレポート』(2024年10月31日発刊)の特集であり、2024年11月27日の生態会・Xport(大阪商工会議所)共催イベントで、結果を報告しました。
【結果概要】
1.全体: 調査に協力した関西スタートアップのうち、70%は起業した時と比べて現在の事業に満足と回答しました。スタートアップの「成功」の定義は様々で、個人の価値観や期待値によっても異なります。これらの観点から、起業時と比べた現在の満足度について質問しました。困難も多い起業について、多くの経営者は不満や不安を持っているのではと予想していましたが、意外にも「大変満足している(24%)」「満足している(46%)」と70%が肯定的でした。自由回答からは肯定的な理由として、「事業の成長を実感している」「仲間や支援者が増えている」「自由に事業を進められる」「社会貢献の実感がある」などが挙げられました。一方、否定的な理由は、「まだ成し遂げられていないことが多い」「資金調達に苦戦している」「売り上げがまだ十分でない」などでした。
2.起業1-2年目では満足度が低い企業が他より多く、33%から45%に達しました。母数は少ないですが、設立年度で分けて満足度を見ると、2024年・2023年設立で「満足していない」「全然満足していない」の回答が多い傾向にありました。生態会では設立5年以内のスタートアップに取材をしていますが、この層は成長途上で、試行錯誤をしており、悩みながら事業を進めています。一方、2013年以前(設立10年以上)の企業でも、「満足していない」「全然満足していない」という回答が27%ありました。この結果を見て、生態会の副理事長の岩田進(イルグルム代表)は、「(自分は)上場してもなお満足していない。現状に満足していては成長がない。」と、貪欲であり続けたいといいます。
3.年商と満足度の関係:満足度は売上が大きくなると高まる傾向にあります。 年商が1億円以上の企業では、「大変満足」「満足」の評価をしたスタートアップが過半数でした。統計的に分析しても、満足度と売り上げには相関関係が見られました。
4.創業メンバーの変化:創業メンバーは、仕事関係や友人が主でトップ3を占め、その次は求人や人材紹介会社経由での採用となりました。現在も会社に残る創業メンバーについて聞いたところ、半分以上残っているのが81%でした。メンバーが抜けた理由は「能力の不足(17人)」「方向性の違い(16人)」が、「給与を十分払えなかった(8人)」を上回りました。
5.東京と比べて、関西で事業を行う上での困難トップ5(赤枠)は、1位「経営層(CX人材)の採用」、2位「資金調達(エクィティ投資)」、3位「ほかの起業家との出会い」、4位「一般社員の採用」、5位「知名度向上」でした。経営層の採用が難しいという話は、頻繁に聞きます。資金調達の困難さは、日本のベンチャーキャピタル(VC)の7割が東京に集中していることも起因すると思われます。一方、困難度は低い(青枠)は、有利子負債の調達や補助金・助成金の調達、プロダクト・商品開発、オフィス環境や住環境などでした。ヒト・モノ・カネの中で、ヒト・カネはまだ困難であるものの、モノについて、特にオフィスや住環境については関西のほうが良いという意見もよく聞かれます。
今回の調査では、これ以外にも下記について質問しております。
- 起業した時と現在の事業はどの程度変わったか、その理由
- 起業して良かったと思うこと
- 起業して良くなかったと思うこと
- 会社が成長するために、現在必要としている支援
- これまでに、どのような資金調達をしたか
- エンジェル税制についての認知や利用
- 関西のスタートアップ支援や起業環境(エコシステム)に関して、希望や改善点
【回答企業 属性】
生態会は設立5年以内のスタートアップを取材対象としています。今回の調査は過去の取材企業を中心に協力を募ったため、回答企業は比較的小規模で売り上げが1億円以下である企業が約7割でした。とはいえ、資本金1億円以上が12社、売上1億円以上が30社あり、多様なステージのスタートアップの声が寄せられたことがわかります。業種的には、1位「ソフトウェア」、2位「バイオテクノロジー・医療・ヘルスケア」、3位「コンピューター・ハードウェア・ITサービス」でした。「バイオテクノロジー・医療・ヘルスケア」といった大学発ディープテックが多数みられるのは、関西の特徴です。また、BtoB企業が9割を占めました。
【報告会イベントで、課題の解決に向けて討論】
生態会は、Xport(大阪商工会議所)と共催で、2024年11月27日に報告会を開催しました。大阪府 政策企画部 成長戦略局長 池田 純子氏、株式会社大阪取引所 代表取締役社長 横山隆介氏、株式会社Lean on Me 代表取締役 志村駿介氏をゲストに迎え、生態会の理事長アレン・マイナーと調査結果について、語り合いました。東京に比べて関西で事業を行うことの困難について、どのように解消に向けて動いているかについて、大阪府や大阪取引所から取り組みを紹介しました。
大阪府は、大阪経済の発展に繋げる国際金融都市の実現に向け、海外や東京のVCを誘致して投資環境を強化しています。また大阪取引所は、「大阪スタートアップ成長支援塾」を通じて、取引所の社員、証券会社、ベンチャーキャピタル(VC)、公認会計士、先輩起業家などからスタートアップが実践的な話を聞く機会を提供しています。
イベントでのパネルディスカッション
アレンからは、「関西で調査に協力するスタートアップが112社もあったこと、その中の11%は資本金1億円以上で資金調達ができ、5億円以上の売上を獲得する企業も見られるなど、素晴らしい」と、生態会発足時と比べた関西起業エコシステムの発展に感銘を受けたことが語られました。
今後も生態会は、関西スタートアップの現状を理解し、環境改善に向けて尽力してまいります。
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設立間もない企業は、満足度が低い傾向。売上が多いと、満足度は高まる東京と比べて関西で事業を行う上での困難は、「採用」「資金調達」「他の起業家との出会い」「知名度向上」
NPO法人生態会(所在地:大阪府大阪市北区、理事長:アレン・マイナー)は、関西のスタートアップの成功や失敗、課題を可視化することを目的に、2024年10月3日~26日にスタートアップにインターネット調査を行い、112社から回答を得ました。その結果の一部を、発表します。調査対象は、現在関西に本社がある(110社)・過去に関西に本社があったスタートアップ(2社)です。
【背景】当法人は、関西の起業エコシステムの活性化を目指して、2018年11月に設立されました。関西のスタートアップを取材・調査し、概要やリストを集めた『関西スタートアップレポート』の発行、起業相談・イベント・マッチングなどを行っています。スタートアップ取材は200社を超え、紹介ブログは関西最大級のスタートアップメディアです。昨今、国の施策もありスタートアップが注目を得て、華々しいストーリーが紹介されています。しかし、関西のスタートアップにとって現状はどうか、課題は何かを理解し、起業環境の改善強化を進めるために、調査を実施しました。なおこの調査は、20号記念となる『関西スタートアップレポート』(2024年10月31日発刊)の特集であり、2024年11月27日の生態会・Xport(大阪商工会議所)共催イベントで、結果を報告しました。
【結果概要】
1.全体: 調査に協力した関西スタートアップのうち、70%は起業した時と比べて現在の事業に満足と回答しました。スタートアップの「成功」の定義は様々で、個人の価値観や期待値によっても異なります。これらの観点から、起業時と比べた現在の満足度について質問しました。困難も多い起業について、多くの経営者は不満や不安を持っているのではと予想していましたが、意外にも「大変満足している(24%)」「満足している(46%)」と70%が肯定的でした。自由回答からは肯定的な理由として、「事業の成長を実感している」「仲間や支援者が増えている」「自由に事業を進められる」「社会貢献の実感がある」などが挙げられました。一方、否定的な理由は、「まだ成し遂げられていないことが多い」「資金調達に苦戦している」「売り上げがまだ十分でない」などでした。
2.起業1-2年目では満足度が低い企業が他より多く、33%から45%に達しました。母数は少ないですが、設立年度で分けて満足度を見ると、2024年・2023年設立で「満足していない」「全然満足していない」の回答が多い傾向にありました。生態会では設立5年以内のスタートアップに取材をしていますが、この層は成長途上で、試行錯誤をしており、悩みながら事業を進めています。一方、2013年以前(設立10年以上)の企業でも、「満足していない」「全然満足していない」という回答が27%ありました。この結果を見て、生態会の副理事長の岩田進(イルグルム代表)は、「(自分は)上場してもなお満足していない。現状に満足していては成長がない。」と、貪欲であり続けたいといいます。
3.年商と満足度の関係:満足度は売上が大きくなると高まる傾向にあります。 年商が1億円以上の企業では、「大変満足」「満足」の評価をしたスタートアップが過半数でした。統計的に分析しても、満足度と売り上げには相関関係が見られました。
4.創業メンバーの変化:創業メンバーは、仕事関係や友人が主でトップ3を占め、その次は求人や人材紹介会社経由での採用となりました。現在も会社に残る創業メンバーについて聞いたところ、半分以上残っているのが81%でした。メンバーが抜けた理由は「能力の不足(17人)」「方向性の違い(16人)」が、「給与を十分払えなかった(8人)」を上回りました。
5.東京と比べて、関西で事業を行う上での困難トップ5(赤枠)は、1位「経営層(CX人材)の採用」、2位「資金調達(エクィティ投資)」、3位「ほかの起業家との出会い」、4位「一般社員の採用」、5位「知名度向上」でした。経営層の採用が難しいという話は、頻繁に聞きます。資金調達の困難さは、日本のベンチャーキャピタル(VC)の7割が東京に集中していることも起因すると思われます。一方、困難度は低い(青枠)は、有利子負債の調達や補助金・助成金の調達、プロダクト・商品開発、オフィス環境や住環境などでした。ヒト・モノ・カネの中で、ヒト・カネはまだ困難であるものの、モノについて、特にオフィスや住環境については関西のほうが良いという意見もよく聞かれます。
今回の調査では、これ以外にも下記について質問しております。
- 起業した時と現在の事業はどの程度変わったか、その理由
- 起業して良かったと思うこと
- 起業して良くなかったと思うこと
- 会社が成長するために、現在必要としている支援
- これまでに、どのような資金調達をしたか
- エンジェル税制についての認知や利用
- 関西のスタートアップ支援や起業環境(エコシステム)に関して、希望や改善点
【回答企業 属性】
生態会は設立5年以内のスタートアップを取材対象としています。今回の調査は過去の取材企業を中心に協力を募ったため、回答企業は比較的小規模で売り上げが1億円以下である企業が約7割でした。とはいえ、資本金1億円以上が12社、売上1億円以上が30社あり、多様なステージのスタートアップの声が寄せられたことがわかります。業種的には、1位「ソフトウェア」、2位「バイオテクノロジー・医療・ヘルスケア」、3位「コンピューター・ハードウェア・ITサービス」でした。「バイオテクノロジー・医療・ヘルスケア」といった大学発ディープテックが多数みられるのは、関西の特徴です。また、BtoB企業が9割を占めました。
【報告会イベントで、課題の解決に向けて討論】
生態会は、Xport(大阪商工会議所)と共催で、2024年11月27日に報告会を開催しました。大阪府 政策企画部 成長戦略局長 池田 純子氏、株式会社大阪取引所 代表取締役社長 横山隆介氏、株式会社Lean on Me 代表取締役 志村駿介氏をゲストに迎え、生態会の理事長アレン・マイナーと調査結果について、語り合いました。東京に比べて関西で事業を行うことの困難について、どのように解消に向けて動いているかについて、大阪府や大阪取引所から取り組みを紹介しました。
大阪府は、大阪経済の発展に繋げる国際金融都市の実現に向け、海外や東京のVCを誘致して投資環境を強化しています。また大阪取引所は、「大阪スタートアップ成長支援塾」を通じて、取引所の社員、証券会社、ベンチャーキャピタル(VC)、公認会計士、先輩起業家などからスタートアップが実践的な話を聞く機会を提供しています。
イベントでのパネルディスカッション
アレンからは、「関西で調査に協力するスタートアップが112社もあったこと、その中の11%は資本金1億円以上で資金調達ができ、5億円以上の売上を獲得する企業も見られるなど、素晴らしい」と、生態会発足時と比べた関西起業エコシステムの発展に感銘を受けたことが語られました。
今後も生態会は、関西スタートアップの現状を理解し、環境改善に向けて尽力してまいります。
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