和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2024年12月22日(日)

「残念、でも大きな前進」 中断の知らせにもエール、和歌山県串本のロケット

宇宙へと向かう小型ロケット「カイロス」。橋杭岩の背後に見える(18日午前11時ごろ、和歌山県串本町くじの川から撮影)
宇宙へと向かう小型ロケット「カイロス」。橋杭岩の背後に見える(18日午前11時ごろ、和歌山県串本町くじの川から撮影)
ロケットが打ち上がる様子を見上げる家族連れら(18日午前11時過ぎ、和歌山県串本町田原で)
ロケットが打ち上がる様子を見上げる家族連れら(18日午前11時過ぎ、和歌山県串本町田原で)
 和歌山県串本町田原の発射場「スペースポート紀伊」から18日に打ち上げられた小型ロケット「カイロス」2号機は、最南端の空に白い線を描き飛び出したが、飛行を中断した。町内各地で見守っていたファンから打ち上げ時に大きな歓声が上がり、中断の知らせにも「大きな前進だ」とエールを送る人が目立った。


 「3、2、1」―。発射場に近い田原海水浴場ではカウントダウンが終わると、山の稜線(りょうせん)からごう音とともに白い機体が現れた。集まった観客は「行け」「すごい」とまばゆい光の行き先を見守り、拍手や万歳で喜んだ。しかし、しばらくして飛行中断措置のアナウンスがあり、残念がる声もあった。

 大阪府交野市から家族3人で訪れた寺田優香さん(35)は「ロケットは思った以上に速かった。私たちの見えない宇宙に行くと思うと感動した」と話していたが、中断を受け「行ったと思っていたが悲しい。3号機も頑張ってほしい。応援している」。

 田嶋勝正町長は「きれいに打ち上がったと感動したが、改めてロケット技術の難しさを感じた。スペースワンはすぐに原因を究明して、3号機の製作に取りかかると思っている。一日でも早くミッションが達成できるように協力していく」と述べた。

 くじの川の橋杭岩前では、奇岩とロケットを写真に収めようと多くの写真愛好者が早朝から三脚を構えていた。橋杭岩の間から白い線を描いて打ち上がるロケットが見えると、観客は「上がった」「やったあ」と歓声を上げ、ロケットの軌跡を追って、空を見上げた。

 海南市の今出卓伸さん(72)は「写真が趣味で、楽しみにしていた。はっきりとロケットを捉えた。感激している」と何度も撮影した写真をモニターで確認し、笑顔を見せた。

 大阪府茨木市の自営業、久角智一さん(46)は長男で小学6年生の一翔君と、前日に車中泊して打ち上げを待っていた。智一さんは「1号機は発射直後に爆発だったけど、今回は打ち上がる姿が見られた。大きな前進。何度も挑戦してほしい」、一翔君は「あんなにはっきりロケットが見られると思っていなかった。かっこいい。今回は残念だったけど、次は成功すると思う」と期待を込めた。

■知事「大変な進歩」

 岸本周平知事は県庁内のモニターで打ち上げの様子を見守った。発射の瞬間は「上がった上がった」と笑顔で喜んだが、その後、飛行中断措置の知らせを受けた。

 報道陣の取材に岸本知事は「青空に向けてロケットが飛んでいる姿を見て感動した。失敗だと思っていない。ミッションは達成できなかったが、ロケットの開発という意味ではすごく進んだと思う。和歌山県にとって記念すべき日」と話した。

 スペースワン社の豊田正和社長から、原因究明を進めることや対策本部をつくった旨の連絡があったといい「3月に1号機が失敗した後、わずか9カ月で2号機を打ち上げた。近い将来の3号機の打ち上げを楽しみにしている」と話した。