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2024年12月24日(火)

霜降り明星せいや、高校時代のいじめ「自分でなんとかしてみせる」 “大人たち”に頼らず乗り越え

せいや初の半自伝小説『人生を変えたコント』執筆風景
せいや初の半自伝小説『人生を変えたコント』執筆風景
 お笑いコンビ・霜降り明星のせいやが初の半自伝小説『人生を変えたコント』(ワニブックス)を25日に発売する。自身が高校時代に経験した「ある日、突然はじまった」壮絶ないじめを赤裸々に明かし、いじめから何とか抜け出そうと生み出した1作のコントについてつづった内容。同書から、「大阪市市立ホシノ高校1年生のイシカワ」が語った、大人にいじめを隠した理由について、一部抜粋し紹介する。

【写真】赤字がびっしり…せいやの執筆風景

■終わらないいじめ…体と精神がSOSサイン

 イシカワは高校に入学してから一度も学校を休んでいない。机が毎日ひっくり返さている状況下でも耐えていた。一度休めばもう戻ってこられないような気もしていたので、イシカワは耐えていた。

 しかし、実は体と精神がSOSサインを出していた。なんと、髪の毛が掴めば掴むほどスルスル抜け出したのだ。いわゆる円形脱毛症の初期症状だ。

 抜け毛がいつもとは比にならないぐらいの量になってしまう。寝て起きたときに枕についている髪の毛の量が異常である。あとは風呂で髪を洗ったときにも、手が真っ黒になるまで抜けてしまっていた。そして、その抜け落ちた髪をよく観察してみると、その毛根の先まで黒くなっており、頭のストレス細胞が毛根を攻撃し、白いはずの毛根がそのような色になってしまっているらしい。

 少しずつ円形に脱毛してしまうそんなイシカワの姿に、担任の荒川先生は「まえから気になっていた面談をさせてくれ」と言い、いよいよオカンが呼ばれて三者面談が行われることになった。

 「まずい……親にこのような状況になっていることをずっと隠してきたのに」

 イシカワはそう思ったが、先生もものすごく不安そうだったので、無理やりにでも面談をなくすのはやめて、しぶしぶ受け入れた。

 面談当日、先生と向き合ってもオカンはあまり状況を理解しておらず、「こんなに図太い息子でも急に円形脱毛症になるんですねぇ」と笑い話のように思っているようだった。

 しかし、先生はついに重い口を開き、今まで黙っていたことを後悔するかのような目で、「イシカワ、正直に言ってくれ。クラスの友達と上手くやれているか?」と核心に迫る質問をしてきた。オカンは「え?」と意表を突かれたような顔だった。息子は家ではあっけらかんとしているので、まったく気づいていなかったのだろう。

 少し間を置いて、イシカワは「もちろん上手くいっています。いじられてはいるが、お笑いのノリのようにふざけ合っている範疇です」と、思ってもいない嘘をついた。先生は「本当にか?」と念を押してきた。先生に申し訳ない気持ちもあったが、「はい」と、また嘘を重ねた。

 このとき、イシカワは「いじめられている」とは絶対に言い出せなかった。まず大きな要因のひとつはオカンだ。オカンに心配されたくないし、まったくそのような素振りを見せてこなかった自分の頑張りが無駄になってしまう。

 そしてもうひとつは、大人の介入を拒みたかったこと。この面談で先生がいじめを認識して、「イシカワをいじめるな!」とクラスに注意してしまったらどうなるだろう。イシカワは先生にチクり、そして大人を利用して同世代を裏切った。そのような空気が流れるに違いない。

 そして、そういう空気になってしまうことの影響は大きすぎる。イシカワが懸命に「いじめではなく、いじられているだけだ」とクラスメイトたちに取り繕ってきたのに、そのバランスが崩れて、いよいよ“いじめられている人”が確定してしまうからだ。それはできるだけ避けたい。一気に学校で過ごしにくくなってしまう恐れがある。そういう心理から先生の助ける手を拒んだ。

 実際、いじめというのは、大人が介入してもきれいに解決しない。当事者同士でなんとかしなければならないのだ。イシカワは今一度、心のなかで先生とオカンに、「ごめん、でも自分でなんとかしてみせるから」とつぶやき、心配をかけてしまったことを2人に謝罪した。

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