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2024年11月20日(水)

「世の中の不条理や人間の欲望」を浮き彫りにする…イ・ウォンテ監督、韓国ノワールの傑作『対外秘』を語る

韓国映画『対外秘』(公開中)イ・ウォンテ監督 (C)ORICON NewS inc.
韓国映画『対外秘』(公開中)イ・ウォンテ監督 (C)ORICON NewS inc.
 韓国映画界のトップ俳優、チョ・ジヌン(『工作 黒金星と呼ばれた男』)、イ・ソンミン(『KCIA 南山の部長たち』)、キム・ムヨル(『犯罪都市 PUNISHMENT』)が共演し、パワフルな演技対決を繰り広げる韓国ノワールの新たな傑作『対外秘』が、11月15日より公開中。本作は1990年代の釜山を舞台に、国会議員の座と極秘文書を巡る壮絶な権力闘争を描いている。

【動画】全員凶悪!?『対外秘』キャラ紹介映像

 「正義を貫く国会議員」を目指し、与党の後任候補として総選挙への出馬を決意したヘウン(チョ・ジヌン)。しかし、政界を牛耳る黒幕スンテ(イ・ソンミン)に裏切られ、公認を取り消されてしまう。復讐に燃えるヘウンは国家を揺るがす極秘文書を手に入れ、ヤクザのピルド(キム・ムヨル)と手を組み選挙資金を調達しようとするが、再びスンテの妨害に遭う。それでも屈しないヘウンは巨悪と闘うため、次第に自らも悪に染まっていく…。政治家ヘウン、黒幕スンテ、ヤクザのピルドが織りなす激しい攻防劇を描いた本作で、浮き彫りにされるものとは――。イ・ウォンテ監督(『悪人伝』)に話を聞いた。

――チョ・ジヌンさん、イ・ソンミンさん、キム・ムヨルさんの演技対決はいかがでしたか?

【イ・ウォンテ監督】彼らは韓国を代表する素晴らしい俳優たちで、一緒に仕事ができてとてもうれしかったです。彼らがカメラの前に立つだけで私の気分も良くなり、素晴らしいアンサンブルを作り出してくれました。

 チョ・ジヌンさんが演じたヘウンは、復讐のため次第に狂気と暴力に囚われていくキャラクターですが、その変化を細部まで見事に演じてくれました。

 イ・ソンミンさんは声を荒げることなく圧倒的な威圧感を放ち、スンテの恐ろしさを存分に表現しています。その声だけで観る者を引き込む力がありました。

 キム・ムヨルさんは善と悪、両極端の表情を巧みに使い分けられる俳優です。ピルドは暴力的な男ですが、徐々に人間的な側面が見え、最後には哀れさすら感じさせる役です。彼はその二面性を非常に上手に演じてくれました。

――劇中に「世の中は汚く、人生は悲しいものだ」という台詞がありますが、これは監督ご自身の考えですか?

【イ・ウォンテ監督】はい、そう思っています。世の中すべてが汚いわけではありませんが、現実には濁りや卑劣さ、残酷さが存在し、裏切りや孤独、悲しみを感じる瞬間が多いのも事実です。それは過去も現在も変わらないことでしょう。美しい理想だけでは生きられないというのが私の実感です。また、この台詞は韓国語だとリズムが良く、非常に響く表現になっています。私自身もお気に入りの台詞の一つです。

――そんな中で、映画は生きる希望になるとお考えですか?

【イ・ウォンテ監督】もちろんです。映画は約2時間で多くの経験を味わえる、非常に魅力的なメディアです。子どもの頃から映画を観るのが好きでしたし、今こうして映画を作る仕事ができていることに感謝しています。

 一つ付け加えると、人生は誰もが一度しか経験できないものです。その点では全員が公平です。本を読んだり映画を観たりして、多くの人生を間接的に体験することが大切だと思います。

――前作『悪人伝』ではヤクザと殺人鬼の対決を描きましたが、今作では「悪の三つ巴」。ノワール映画に惹かれる理由は何ですか?

【イ・ウォンテ監督】私が特に影響を受けたのは、マーティン・スコセッシ監督の作品です。子どもの頃からよく観ていて、その衝撃は今でも心に残っています。彼の作品は社会の暗い部分を描きながら、そこに生きる人々の現実をリアルに映し出しています。権力、暴力、人間の卑劣さといったテーマを通じて、多くのことを学びました。それが、私が映画を作る基盤になっています。

 また、私は歴史の本を読むのも好きで、そこから得た気づきが作品に影響を与えています。歴史を振り返ると、人間は2000年前からほとんど変わらず、欲望から争いが生まれ、権力を握る者が裏切りや欺瞞を繰り返してきたことがわかります。そうした不条理や欲望が私の映画のテーマになっています。

――残酷なシーンを描くことには苦労がありますか?

【イ・ウォンテ監督】『悪人伝』でも残酷なシーンがありましたが、キャラクターを端的に表現するために必要だと思っています。映画は限られた時間で多くを伝えなければならず、残酷な描写もその手段の一つです。

 今作でドラム缶を使ったのは、釜山が海に面している地理的な理由からで、人を海に沈めるという手段が現実味を持つと考えました。ロケーションが山であれば、また違った方法を採用していたと思います。私はノワール作品を多く撮っていますが、残酷なシーンを考えるのは本当につらいです。それでもこのジャンルを追求したいという思いがあります。



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提供:oricon news