和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2024年12月23日(月)

外来生物どう対策? 生物学者らが討論

「外来生物問題と対策」をテーマに討論する(左から)五箇公一さん、守分紀子さん、内山りゅうさん=19日、和歌山県田辺市文里2丁目で
「外来生物問題と対策」をテーマに討論する(左から)五箇公一さん、守分紀子さん、内山りゅうさん=19日、和歌山県田辺市文里2丁目で
 外来生物問題をテーマにした和歌山県主催のシンポジウムが19日、田辺市内のホテルであった。「ダニ先生」で知られる昆虫学者、五箇公一さんらによる討論会などで外来生物の現状や対策を考えた。約170人が聴講した。

 自然と人とが良い関係を築くにはどうすればよいかを考える機会として、県が2016年度から開くシンポジウムの4回目。

 討論会のテーマは「外来生物問題とその対策」。田辺市秋津川出身で東京大学未来ビジョン研究センター特任教授の武内和彦さんがコーディネーターを務め、日本の生物多様性が大きな危機に面していることを示し、その一つとして、在来種や農林水産業に大きな被害を与える「侵略的外来種」の存在を挙げた。

 この外来種の選定に関わる環境省の守分紀子さんは「多くの種が全滅の危機にひんしている。人間の活動によるもので、大量消費など社会経済の仕組みを変えないと駄目。輸入大国である日本は、途上国の自然環境に影響を与えている」と指摘。ネイチャーフォトグラファーの内山りゅうさん(白浜町)は外来種の対策として、教育現場で教える必要性を示し「大事な和歌山が外来種に侵略されているのが怖い。みんなに興味を持ってもらいたい」と訴えた。

 国立環境研究所の生態系リスク評価・対策研究室室長でもある五箇さんも教育の重要性を強調し「いかに引き付けるかが大事。テレビなどで話題にすれば興味のない人にも興味を持ってもらえると思っている」。生き物との共存共栄についても触れ「かわいがるのではなく、すみかを荒らさず、いかにうまくやっていくか考えることが大事だ」と語った。

 討論会の前に、五箇さんの講演もあった。強毒を持つヒアリについて「攻撃性が強く、刺されても多くの人は大丈夫だが、アレルギーにより死ぬ場合がある。症状が出ればすぐに救急車を呼ぶ必要がある」と説明。今後、拡大が予想され「早期発見が大事」と強調した。

 クワガタムシの調査をしていることも紹介し「国内のヒラタクワガタには亜種がたくさんある。それは500万年かけて系統進化してきた。近年多い輸入によってそれが一気に崩壊する恐れがある」と指摘した。日本ではクワガタムシは人気があり、それは自然と共存共生してきた国だからこそだと説明した。

 ウイルスについても触れ「人間にとって勝ち目のない戦い。触らぬ神にたたりなし。今年の夏はオリンピックがあり、海外から多くの人が来る。日本にとってウイルス元年。警戒が必要」と呼び掛けた。

 このほか、田辺中学校・田辺高校生物部が、田辺市新庄町の鳥ノ巣半島で進めるアフリカツメガエルの駆除活動について発表した。