漁協と市の責任追及 不正支出で田辺市議会
水産事業での不正支出について、和歌山県田辺市は9日、市議会全員協議会で調査結果を報告した。議員からは補助金を水増し請求していた和歌山南漁協や、それを見逃したり、虚偽の資料を作成したりした市の責任を追及する声が相次いだ。
久保浩二議員(共産)は「漁協の補助金不正受給は、だますつもりだったのが明らかだ。返還して終わりでは駄目。刑事責任を追及しないのか」と質問。松川靖弘総務部長は「過大な請求分は返還を求める」と答えるにとどまった。
不正支出は調査初年の1999年度に72万5185円だったのが、年々増加し、2014年度は553万8375円にまで増えていた。
川﨑五一議員(共産)は「最初は小さくても、ばれないと分かると拡大していく。市の責任は重大。公金管理の意識が欠如している」と指摘。松川総務部長は「設置予定の検証委員会の中で、補助金行政の在り方について意見をもらいたい」と述べた。
報告書では、市水産課は漁協の経営が厳しいことを認識し「つぶしてはならない」という潜在意識の下、事業を進めていた▽数多くの事業をしなければならない状況で、配置の職員数は多いと言えず、事業の意義を重要視した引き継ぎもしていなかった▽不正を問題視した職員もいたが、改められず、組織としてのぜい弱さが浮き彫りになった―と問題点を指摘している。
水産事業の不正な支出を巡り、市議会は17、18両年度の一般会計決算を不認定にしている。決算の不認定は異例で、市でも05年度の市町村合併以降は、この2年度のみ。安達克典議長は「このことの重大さを認め、改めて認識して、信頼の回復に努めてほしい」と注文した。
■問われる市の姿勢 解説
水産事業への不正な支出について、田辺市が公表した最終報告は衝撃的だった。市が2017年度までの19年間に和歌山南漁協などに支出した1億2千万円余りのほぼ半分に当たる約5899万円が不正だったというのだ。
このうち約5482万円について、市は遅延損害金も含めて、和歌山南漁協へ返還を求めるという。
報告によれば、和歌山南漁協は補助金などを申請する際、経費の二重計上や架空の領収書作成、カラ出張という手法を使って水増しして請求し、補助金を受け取っていた。この地域の特産であるイサキやヒロメを売り出していく事業でも水増し請求が続いており、組織としての責任が問われるやり方だった。
驚くのは、そうした申請を市が無批判に認め続けてきたこと。担当の水産課には、前任の職員から引き継いだことを疑いもせず、逆に報告書の作成などに協力し、不正に加担していた職員もいたそうだ。
公に奉仕する公務員として、その罪は重い。それを見逃していた上司や市の幹部の責任も同様だ。たとえ、漁協の経営が厳しいから配慮したいという気持ちがあったとしても、それは言い訳にならない。
職場の環境に問題があったのであれば、その管理者が手を打たなければならない。一連の不正行為を問題視し、上司に相談した職員もいたというのに、その声も封殺されていた。
そうしたことも盛り込んだ報告を読むと、ことは漁協の不正であると同時に、補助金を交付する市の不正であるともいえる。
市は「内部監査や内部通報制度について研究する」「失った信頼の回復に全力で取り組む」という。ならば、今後の行動で、その意思を示していくしかない。まずは、漁協に不正受給分について返還を請求し、同時に当該職員やその上司、そして市のトップの責任を問うことである。
(中陽一)
久保浩二議員(共産)は「漁協の補助金不正受給は、だますつもりだったのが明らかだ。返還して終わりでは駄目。刑事責任を追及しないのか」と質問。松川靖弘総務部長は「過大な請求分は返還を求める」と答えるにとどまった。
不正支出は調査初年の1999年度に72万5185円だったのが、年々増加し、2014年度は553万8375円にまで増えていた。
川﨑五一議員(共産)は「最初は小さくても、ばれないと分かると拡大していく。市の責任は重大。公金管理の意識が欠如している」と指摘。松川総務部長は「設置予定の検証委員会の中で、補助金行政の在り方について意見をもらいたい」と述べた。
報告書では、市水産課は漁協の経営が厳しいことを認識し「つぶしてはならない」という潜在意識の下、事業を進めていた▽数多くの事業をしなければならない状況で、配置の職員数は多いと言えず、事業の意義を重要視した引き継ぎもしていなかった▽不正を問題視した職員もいたが、改められず、組織としてのぜい弱さが浮き彫りになった―と問題点を指摘している。
水産事業の不正な支出を巡り、市議会は17、18両年度の一般会計決算を不認定にしている。決算の不認定は異例で、市でも05年度の市町村合併以降は、この2年度のみ。安達克典議長は「このことの重大さを認め、改めて認識して、信頼の回復に努めてほしい」と注文した。
■問われる市の姿勢 解説
水産事業への不正な支出について、田辺市が公表した最終報告は衝撃的だった。市が2017年度までの19年間に和歌山南漁協などに支出した1億2千万円余りのほぼ半分に当たる約5899万円が不正だったというのだ。
このうち約5482万円について、市は遅延損害金も含めて、和歌山南漁協へ返還を求めるという。
報告によれば、和歌山南漁協は補助金などを申請する際、経費の二重計上や架空の領収書作成、カラ出張という手法を使って水増しして請求し、補助金を受け取っていた。この地域の特産であるイサキやヒロメを売り出していく事業でも水増し請求が続いており、組織としての責任が問われるやり方だった。
驚くのは、そうした申請を市が無批判に認め続けてきたこと。担当の水産課には、前任の職員から引き継いだことを疑いもせず、逆に報告書の作成などに協力し、不正に加担していた職員もいたそうだ。
公に奉仕する公務員として、その罪は重い。それを見逃していた上司や市の幹部の責任も同様だ。たとえ、漁協の経営が厳しいから配慮したいという気持ちがあったとしても、それは言い訳にならない。
職場の環境に問題があったのであれば、その管理者が手を打たなければならない。一連の不正行為を問題視し、上司に相談した職員もいたというのに、その声も封殺されていた。
そうしたことも盛り込んだ報告を読むと、ことは漁協の不正であると同時に、補助金を交付する市の不正であるともいえる。
市は「内部監査や内部通報制度について研究する」「失った信頼の回復に全力で取り組む」という。ならば、今後の行動で、その意思を示していくしかない。まずは、漁協に不正受給分について返還を請求し、同時に当該職員やその上司、そして市のトップの責任を問うことである。
(中陽一)