和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2024年11月18日(月)

体験きっかけに移住も 都市と農村「ツナグプロジェクト」、和歌山・みなべで報告会

地域報告会で研修で学んだ感想を話す体験者5人(写真奥)=25日、和歌山県みなべ町芝で
地域報告会で研修で学んだ感想を話す体験者5人(写真奥)=25日、和歌山県みなべ町芝で
 農山漁村での関係人口の創出を目指す人材育成プログラム「TUNAGU(ツナグ)プロジェクト」の和歌山県みなべ町地域報告会がこのほど、同町芝の町役場であった。主催する一般社団法人日本ウェルビーイング推進協議会が研修を振り返り、体験者と受け入れ側のいずれからも「良い取り組みだ」という声が聞かれた。


 同プログラムは、人口減少による産業の後継者不足や活力低下の課題解決のため、「1次産業ワーケーション」を切り口として都市部の人に積極的に地域に関わってもらい関係人口の増加を目指そうという農林水産省の補助を受けた企画。関東を中心に希望者44人が同町やすさみ町、石川県能登町、福井県高浜町の4地域の中から好きな場所を選び、昨年11月~今年2月の間で計15日間にわたって研修した。

 みなべ町には33人が訪れた。海と山に囲まれた自然の中、特産の「南高梅」や「紀州備長炭」の生産に触れ、梅の栽培に欠かせないニホンミツバチの実態を知り、巣箱を作って山林に設置する体験もして、世界農業遺産「みなべ・田辺の梅システム」について学んだ。夏場に産卵にやって来るアカウミガメについての話も聞いたほか、梅の商品や料理の開発について考える取り組みもした。

 報告会は今回が4カ所目。小谷芳正町長や町職員、町内の農家、加工業者ら約50人が参加した。研修体験者も5人が出席した。

 同協議会代表理事の島田由香さんと研修リーダーの澁谷まりえさんがプロジェクトの取り組み状況を報告。研修体験者に終了後に実施したアンケートの結果として、ポジティブ度が増え、ネガティブ度が減り、満足度が非常に高かったことを紹介した。来年度も続け、体験者にさまざまなアイデアをもらったり、起業の創出に協力してもらったりしたいとも語った。

 体験者による報告もあった。京都府宇治市の鈴木直人さん(44)は体験をきっかけに妻(40)と長男(1)と一緒にみなべ町に移住してきており、「子どもが生まれたのを機会に地方への移住を考えていた。今回、良い縁があった。梅収穫ワーケーションの取り組みに関わっていければと思う」と話した。

 他の体験者からは「関わってくれた人は優しく、陽気で、大好きになった」「人々の心の温かさや熱い思いに感銘を受けた。みなべの良さを伝えていきたい」といった声が聞かれた。

 受け入れた農家や加工業者らは「みなべ町にない職種の人が関わってくれ、良い影響を受けた」「みんな生き生きとしていて、いろいろな感想や意見をもらえた」「都会の人に私たちの梅作りにかける思いを知ってもらうのが一番のアピールになると思っていたのでよかった」などと話した。

 小谷町長は「みなべを見直す機会になりよかった。ファンがもっと増えるよう、これからもPRしていただきたい」と語った。