【動画】歩いてみました!「大日山周遊ルート」 世界遺産登録20周年、和歌山・田辺市本宮町
和歌山県田辺市本宮町の熊野本宮観光協会や熊野本宮語り部の会が2024年7月に迎える「紀伊山地の霊場と参詣道」の世界遺産登録20周年に合わせ、熊野古道を歩きながら熊野本宮大社や温泉郷を巡ることができる「大日山周遊ルート」のPRに力を入れている。記念の年に熊野古道歩きを始めるきっかけになればと、語り部の会の松本純一会長(76)にこのルートを案内してもらった。
関係者で道普請をしたり、案内板を設置したりして新たに整備したルート。大日山(標高369メートル)の周囲にある世界遺産熊野本宮館や渡瀬温泉、湯の峰温泉、熊野古道「大日越」、熊野本宮大社などを巡るもので、距離は約9キロ。
■日本一の大鳥居から出発
世界遺産熊野本宮館を出発し、まず最初に向かうのが熊野本宮大社の旧社地・大斎原(おおゆのはら)だ。
そこにそびえる大鳥居は高さ33・9メートル、幅42メートルと日本一の大きさ。建てられたのは世界遺産登録前の2000年で、松本さんは「それまで大斎原に行く人は少なかったが、この大鳥居ができてから非常に多くの人が大斎原を訪れるようになった」と振り返る。
熊野川と音無川、岩田川が合流する地点の中州にある大斎原は、明治22(1889)年の大水害で被災して高台に移った熊野本宮大社が本来あった場所だ。現在は石祠が建っている。
昨年復旧した音無川に架かる橋を渡り、国道168号を新宮方面に歩いて備崎橋の手前を山側の側道に入ると、世界遺産に登録されている熊野古道に合流する。古道は緩やかな上りの坂道になっており、しばらく歩くと「松葉峠」に到着した。
■美しい木漏れ日の古道
この峠を左折すると請川地区の集落へ、右へ向かうと渡瀬温泉を経て湯の峰温泉へ向かうことができる。「熊野詣紀行」などに見られるように、江戸時代には多くの参詣者がこの道を歩いて湯の峰温泉を目指したといい、今も石の道標が残る。
ここからはウバメガシなどが生い茂り、木漏れ日が美しい古道が続いた。途中、幹が白くなった木が目についた。松本さんによると、これは菌に冒されて変色したもので「山姥(やまんば)の休め木」と呼んだ地方もあったという。
舗装道路に出てしばらく歩くと、巨大な露天風呂で知られる温泉施設やキャンプ場などがある渡瀬地区に到着。集落を過ぎると、道沿いに航海安全の神様でもある「金比羅宮」があり、この地域ではかつて、木材の筏(いかだ)流しが盛んであったと松本さんが教えてくれた。
■見どころ多い湯の峰温泉
小坂という集落を過ぎると、約1800年前に発見された日本最古の温泉という湯の峰温泉に到着。熊野に詣でた多くの人たちを清め、癒やしてきた由緒ある温泉である。
湯の花によってできたとされる本尊をまつる東光寺や新しく建て替えられた公衆浴場、高僧・山本玄峰老師ゆかりの「玄峰塔」、小栗判官が蘇生したという入浴できる世界遺産の「つぼ湯」といった見どころが満載だ。
約90度の熱湯が自噴し、卵などをゆでることができる「湯筒」も楽しい。松本さんは「私の少し上の年代の人はここに石を入れておき、朝にポケットに入れて温まりながら学校に通ったと聞いた。最近はカップラーメンを作る人もおり、味がまろやかになっておいしい」と話した。
■「大日越」の難所に挑む
近くの高台にある湯峯王子を訪れた後、世界遺産に登録されている熊野古道「大日越」に挑んだ。
熊野本宮大社の例大祭(4月)の幕開けとなる、県指定無形民俗文化財「湯登(ゆのぼり)神事」の舞台となる古道だ。神事では、神の依代(よりしろ)である稚児が湯の峰温泉で身を清めた後、父親らが肩車をしてこの古道を踏破する。
早速700メートルほど険しい上り坂が続く。運動不足の両足が悲鳴を上げ、息が上がった。自分にはとても無理だと思いながら、一歩ずつ歩みを進めた。
登り切ると、巨石に彫られた「鼻欠地蔵」が現れた。江戸時代、大工の棟梁(とうりょう)が誤解して健気な弟子を傷つけたが、この地蔵が身代わりになったという伝説がある。
そこから15分ほど下り坂を進むと、本宮大社の境外社「月見ケ丘(つきみがおか)神社」に着いた。農耕の神で年3回祭りが行われ、昔はここまで牛を連れて登った。そばの「大日堂」には鎌倉時代の作と伝わる大きな石仏が安置されており、大日山の名前の由来になったともされるという。
さらに20分ほど歩くと視界が開け、旧社地・大斎原が見えた。最後に熊野本宮大社に参拝し、この”旅”を終えた。
松本さんは「周遊できる新たなルートで、世界遺産のいろんな場所が含まれている。どこからでもスタートでき、どこでも終わることができるのも良いところ。一度歩いてみませんか」と呼びかけている。
◇
大日山周遊ルートを一巡する場合のガイド料は、語り部1人につき1万6千円(税込み)。語り部1人で20人まで案内可能。弁当の注文も紹介できる。
問い合わせは熊野本宮観光協会(0735・42・0735)へ。
関係者で道普請をしたり、案内板を設置したりして新たに整備したルート。大日山(標高369メートル)の周囲にある世界遺産熊野本宮館や渡瀬温泉、湯の峰温泉、熊野古道「大日越」、熊野本宮大社などを巡るもので、距離は約9キロ。
■日本一の大鳥居から出発
世界遺産熊野本宮館を出発し、まず最初に向かうのが熊野本宮大社の旧社地・大斎原(おおゆのはら)だ。
そこにそびえる大鳥居は高さ33・9メートル、幅42メートルと日本一の大きさ。建てられたのは世界遺産登録前の2000年で、松本さんは「それまで大斎原に行く人は少なかったが、この大鳥居ができてから非常に多くの人が大斎原を訪れるようになった」と振り返る。
熊野川と音無川、岩田川が合流する地点の中州にある大斎原は、明治22(1889)年の大水害で被災して高台に移った熊野本宮大社が本来あった場所だ。現在は石祠が建っている。
昨年復旧した音無川に架かる橋を渡り、国道168号を新宮方面に歩いて備崎橋の手前を山側の側道に入ると、世界遺産に登録されている熊野古道に合流する。古道は緩やかな上りの坂道になっており、しばらく歩くと「松葉峠」に到着した。
■美しい木漏れ日の古道
この峠を左折すると請川地区の集落へ、右へ向かうと渡瀬温泉を経て湯の峰温泉へ向かうことができる。「熊野詣紀行」などに見られるように、江戸時代には多くの参詣者がこの道を歩いて湯の峰温泉を目指したといい、今も石の道標が残る。
ここからはウバメガシなどが生い茂り、木漏れ日が美しい古道が続いた。途中、幹が白くなった木が目についた。松本さんによると、これは菌に冒されて変色したもので「山姥(やまんば)の休め木」と呼んだ地方もあったという。
舗装道路に出てしばらく歩くと、巨大な露天風呂で知られる温泉施設やキャンプ場などがある渡瀬地区に到着。集落を過ぎると、道沿いに航海安全の神様でもある「金比羅宮」があり、この地域ではかつて、木材の筏(いかだ)流しが盛んであったと松本さんが教えてくれた。
■見どころ多い湯の峰温泉
小坂という集落を過ぎると、約1800年前に発見された日本最古の温泉という湯の峰温泉に到着。熊野に詣でた多くの人たちを清め、癒やしてきた由緒ある温泉である。
湯の花によってできたとされる本尊をまつる東光寺や新しく建て替えられた公衆浴場、高僧・山本玄峰老師ゆかりの「玄峰塔」、小栗判官が蘇生したという入浴できる世界遺産の「つぼ湯」といった見どころが満載だ。
約90度の熱湯が自噴し、卵などをゆでることができる「湯筒」も楽しい。松本さんは「私の少し上の年代の人はここに石を入れておき、朝にポケットに入れて温まりながら学校に通ったと聞いた。最近はカップラーメンを作る人もおり、味がまろやかになっておいしい」と話した。
■「大日越」の難所に挑む
近くの高台にある湯峯王子を訪れた後、世界遺産に登録されている熊野古道「大日越」に挑んだ。
熊野本宮大社の例大祭(4月)の幕開けとなる、県指定無形民俗文化財「湯登(ゆのぼり)神事」の舞台となる古道だ。神事では、神の依代(よりしろ)である稚児が湯の峰温泉で身を清めた後、父親らが肩車をしてこの古道を踏破する。
早速700メートルほど険しい上り坂が続く。運動不足の両足が悲鳴を上げ、息が上がった。自分にはとても無理だと思いながら、一歩ずつ歩みを進めた。
登り切ると、巨石に彫られた「鼻欠地蔵」が現れた。江戸時代、大工の棟梁(とうりょう)が誤解して健気な弟子を傷つけたが、この地蔵が身代わりになったという伝説がある。
そこから15分ほど下り坂を進むと、本宮大社の境外社「月見ケ丘(つきみがおか)神社」に着いた。農耕の神で年3回祭りが行われ、昔はここまで牛を連れて登った。そばの「大日堂」には鎌倉時代の作と伝わる大きな石仏が安置されており、大日山の名前の由来になったともされるという。
さらに20分ほど歩くと視界が開け、旧社地・大斎原が見えた。最後に熊野本宮大社に参拝し、この”旅”を終えた。
松本さんは「周遊できる新たなルートで、世界遺産のいろんな場所が含まれている。どこからでもスタートでき、どこでも終わることができるのも良いところ。一度歩いてみませんか」と呼びかけている。
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大日山周遊ルートを一巡する場合のガイド料は、語り部1人につき1万6千円(税込み)。語り部1人で20人まで案内可能。弁当の注文も紹介できる。
問い合わせは熊野本宮観光協会(0735・42・0735)へ。