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2024年12月19日(木)

イノシシと知恵比べ 紀伊大島、箱わなで2年ぶり捕獲

京都大学フィールド科学教育研究センター紀伊大島実験所の敷地で捕獲されたイノシシ(和歌山県串本町須江で)
京都大学フィールド科学教育研究センター紀伊大島実験所の敷地で捕獲されたイノシシ(和歌山県串本町須江で)
 和歌山県串本町須江の京都大学フィールド科学教育研究センター紀伊大島実験所(県指定大島鳥獣保護区)で7日、イノシシ1匹が捕獲された。昨年1月の3匹以来で約2年ぶり。梅本信也所長(60)は「イノシシは学習能力が高く、わなに入らなくなっていたが、寒くなり、餌不足も相まってたまりかねて入ったと思われる」と話している。

 11・75ヘクタールの敷地内に設置されている有害駆除の箱わなに入っていた。地元猟友会の小山喜行さん(71)によると、体長約80センチ、体重約20キロの雌で、今春に生まれたものとみられる。

 小山さんによると、もともと須江地区を含む紀伊大島には大きな哺乳類は生息しておらず、猟友会はキジ、カモなどの鳥類だけを捕獲していたという。1999年9月のくしもと大橋開通以降、イノシシが確認されるようになり、アナグマ、アライグマ、サルの目撃情報もあるという。シカは確認されていない。

 小山さんは、実験所の敷地に設置している3基を含め島内に箱わなを8基仕掛けており、毎朝、確認しているという。「わなに入るイノシシの数は減っているが、島内のイノシシの数が減っているかどうかは分からない。最近は、工事の音などで民家の近くには寄りつかなくなり、目撃情報も減っている。畑の周囲に防護柵を設けるようになってからは、農作物被害の話もあまり聞いていない」と話す。

 猟友会はメンバーの高齢化で、有害駆除の労力や、わなに入れる餌の調達などが年々厳しくなっているという。小山さんは「10年後には駆除する人がいなくなるのでは」と話している。

 梅本所長は、イノシシなどの島への侵入経路として、橋を渡って来た▽泳いで来た▽水害で流されて来た▽誰かが島内に放った―など、さまざまな可能性があると分析。もともと生息していなかった哺乳類の侵入が紀伊大島の植生を壊していると、早期対策を訴えている。