和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2024年11月22日(金)

せき止めや去痰薬不足慢性化 和歌山県でも、夏のコロナとインフル同時流行の影響

薬局の薬棚には、欠品の棚も見られた(和歌山県田辺市内で)
薬局の薬棚には、欠品の棚も見られた(和歌山県田辺市内で)
 全国的に医薬品不足が課題となる中、和歌山県紀南地方でも慢性的な不足により薬局などの現場は対応に追われている。関係者は「今は何とか回っている状況」というが、今後さらに深刻な事態に陥らないかと心配している。


 薬の供給不足は、ジェネリック医薬品メーカーの不祥事に伴う業務停止処分などに端を発し、今夏以降は、新型コロナウイルスや季節性インフルエンザの同時流行が続き、せき止め薬やたんを切る「去痰(きょたん)薬」が不足している。

 厚生労働省は18日、せき止め薬や去痰薬の主要メーカー8社に、供給増を要請したほか、さらなる増産に向けた企業への支援策も検討していると発表した。

 9月末には、せき止めや去痰薬の処方を必要最小限に抑え、過剰発注を控えるよう、都道府県を通じて医療機関や薬局などに協力を依頼した。

 田辺市新庄町の紀南病院薬剤部によると、最近では抗生物質や去痰薬、ビタミン類が特に不足しているという。

 同部は「いろいろな要因があるだろうが、コロナ禍と同時期ぐらいから目立ってきた。一つが入ってくるようになっても、また別の薬が不足したりして、回復している実感はない。まだまだ続いている」という。

 ある薬がないと、他メーカーの同種同効薬を探すなどして対応しており「医師の協力も得て、工夫しながらどうにかやりくりしている」という。

 市内のある薬局でも風邪の関係の薬など、ジェネリック医薬品(後発薬)を中心に不足し「いろんな薬が不足していて、毎日のように問屋にいつ入荷するのかと問い合わせているような状況だ」という。

 薬局の代表者は「代替え薬を使うケースでは、患者の飲み違えなどが起きる可能性もあるので、メーカーが安定供給できるようにしてほしいし、価値がある薬はコストをかけて作れるようにする国の政策が必要。地域の中でも患者に迷惑が掛からないような形で調整をしていかなければいけない」と話している。

 県薬剤師会によると、慢性的な供給不足で県内の薬局でも薬の確保に困っているという話が出ているといい、県によると、どうしても必要な薬が確保できないという相談が医療機関から保健所を通じて寄せられ、厚労省の相談窓口を紹介したケースもあったという。

 日本医師会の医薬品供給不足の緊急アンケート(8月9日~9月30日)では、院内で薬を処方している医療機関の90%が入手困難な医薬品があると回答、そのうちほぼ半数が卸に発注しても納品されないことがあると答えた。また、院外処方の医療機関の74%が、外部の薬局から在庫不足の連絡を受けたことがあると回答している。