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2024年12月22日(日)

熊野が舞台の5編収録 宇江さんが小説集「牛鬼の滝」

中編小説集「牛鬼の滝」を発行した宇江敏勝さん(23日、和歌山県田辺市新屋敷町で)
中編小説集「牛鬼の滝」を発行した宇江敏勝さん(23日、和歌山県田辺市新屋敷町で)
 和歌山県田辺市中辺路町野中在住の作家、宇江敏勝さん(82)の中編小説集「牛鬼の滝」が新宿書房から発刊された。昭和初め頃を中心とした熊野地方を舞台に、タヌキやイノシシ、キジやオオカミなどの動物と人を巡る物語5編を収録している。

 宇江さんは熊野高校を卒業後、炭焼きや林業に従事。その経験を生かし「山の作家」として熊野を舞台にした文筆活動を続けている。

 新作は、民俗伝奇小説集としては「流れ施餓鬼(せがき)」「熊野木遣節」「呪い釘」などに続く9冊目。同人誌「VIKING」に2019年4月から10月にかけて掲載した作品をまとめた。

 表題作の「牛鬼の滝」は、同市本宮町を流れる大塔川の流域に広大な原生林があった時代、モミやツガなどの黒木を伐採していた人から聞いた話を題材にしている。

 ほかに「狸の穴」「雉撃ち」「狼のおぼる夜に」などがある。

 宇江さんは「フィクションだが、明治から大正時代に生活していた人たちから聞き取った当時の暮らしぶりや、史実を土台にしている。いま自分が書き残しておかないと消えてしまうという思いで書いている」と話している。

 四六判290ページ、2200円(税別)。全国の書店で販売している。