和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2024年12月22日(日)

ブロック塀撤去、今のうち  補助金拡充で申請2倍、田辺市

ブロック塀を撤去し、設置したフェンス(和歌山県田辺市内で)
ブロック塀を撤去し、設置したフェンス(和歌山県田辺市内で)
撤去前の外観
撤去前の外観
 巨大地震が発生するたび、家庭の防災力アップが叫ばれるが、一時的なものになりがち。17日で阪神大震災から28年。危機が来るその前に、身近な備えを見直す。


 和歌山県田辺市が2022年度、地震で倒壊の恐れがあるブロック塀の撤去費や撤去後のフェンス設置など改善費の補助金を拡充したところ、申請が過去平均の約2倍に増加した。拡充は24年度までの限定。市は「この機に撤去を考えてほしい」と呼びかけている。

 対象は公道に面した民間のブロック塀。従来の制度は撤去、改善とも事業費の2分の1以内で上限10万円だった。これを事業費の3分の2以内、上限は撤去20万円、改善費17万円に引き上げた。国の補助金に加え、県の補助金が活用できるようになったため。

 補助制度は14年度に始めた。21年度末までの申請は100件。大阪北部地震(18年6月)でブロック塀が倒れ、通学中の女児が犠牲になったのを受け、一時的に増えた年もあったが、2件のみの年もあるなど伸び悩んだ。

 拡充により、22年度は12月末までの申請が24件(撤去のみ10件、改善込み14件)。相談は55件あった。

 市によると、ブロック塀が危険なのは崩れ落ちるからではなく、一枚の巨大な壁が一気に倒れるため。直撃すれば死傷の可能性が高く、倒壊後の撤去も容易ではないという。

 撤去と改善の補助申請をした神子浜1丁目の男性は「擁壁の上にブロック塀があり、危険性は感じていた。通学路に面しており、子どもに対して知らない間に加害者になる可能性がある。ただ、工事には100万円はかかる。補助拡充が後押しになった。心配事がなくなればすっきりする」と話した。

 19年度の「防災・減災に関する県民意識調査」によると、「ブロック塀の点検をしていない」の割合は57・7%。理由は「安全と思うから」が最も多く、続いて「点検の方法が分からない」「費用がかかるから」となっている。県はホームページで、ブロック塀改修の相談先を掲載している。