和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2024年12月21日(土)

エ号遭難慰霊碑に祈り トルコ大使、初の公式訪問

慰霊碑の前で祈りをささげるコルクット・ギュンゲン大使(左から3人目)ら=和歌山県串本町樫野で
慰霊碑の前で祈りをささげるコルクット・ギュンゲン大使(左から3人目)ら=和歌山県串本町樫野で
トルコ記念館を訪れ、エルトゥールル号が遭難した海を見るギュンゲン大使(和歌山県串本町樫野で)
トルコ記念館を訪れ、エルトゥールル号が遭難した海を見るギュンゲン大使(和歌山県串本町樫野で)
ギュンゲン大使(左)にネームプレートを寄贈する杉本紘子さん=和歌山県串本町樫野で
ギュンゲン大使(左)にネームプレートを寄贈する杉本紘子さん=和歌山県串本町樫野で
 トルコのコルクット・ギュンゲン駐日大使(53)が21日、就任後初の公式訪問の一環で和歌山県串本町を訪れた。新型コロナウイルスの感染が急拡大している影響で田嶋勝正町長への表敬訪問は急きょ中止になったが、同町樫野にあるトルコ軍艦エルトゥールル号遭難慰霊碑の前で祈りをささげるなどし、トルコと日本の友好の原点を再確認した。

 公式訪問にはギュンゲン大使のほか、ハビブ・イゼット・ゾールオール駐日武官やウムット・リュトフィ・オズテュルク在名古屋トルコ総領事らが参加した。

 一行は20日、約130年前に串本沖で遭難したエ号が日本に届けた卓被などが展示された県立博物館(和歌山市)を訪れた後、県庁に仁坂吉伸知事を表敬訪問した。

 21日には慰霊碑を訪れ、コーランの一節を唱えながら祈りをささげた後、花束を供えた。

 献花後、ギュンゲン大使は報道陣の取材に「トルコと日本の間には非常に強く深い友好の歴史があり、その友好の根を張っている土地が串本。事故自体は非常に悲しいことだが、トルコ国民にとっては誇りを持って語ることのできる事実。この地を訪れたこの機会に、串本の方々をはじめ、日本の皆さまに心からの感謝の気持ちをお伝えしたい」と話した。

 仁坂知事との意見交換では、今後の緊密な連携を確認したことを説明。「2023年はトルコ共和国建国100周年、24年は日本とトルコの国交樹立100周年の節目の年であり、手を携えて何か協力ができればという話をした」と述べた。

 田嶋町長への表敬訪問が急きょ中止になったことについては「コロナ禍という状況の中、それぞれの立場で厳しい状況を生きている。トルコ人にとってはこの地を訪れるのは一つの任務であると思っており、状況が許す範囲内で実現できたことをうれしく思う。田嶋町長はいつもお世話になっている大切な方であり、今後何かの機会を捉えてゆっくりとお会いできることを望んでいる」と話した。

 その後、樫野にあるトルコ共和国の初代大統領ムスタファ・ケマル・アタテュルク騎馬像や樫野埼灯台、日本赤十字社「平時国際活動発祥の地」記念碑、トルコ記念館などを視察した。

■ネームプレート寄贈 木彫り工房の杉本さん

 串本町潮岬で「木彫り工房はまなす」を営む杉本紘子さん(43)がこの日、同町を訪れたギュンゲン大使に、大使の名前を漢字2文字で表現して周囲に花を彫ったネームプレートを贈呈した。

 杉本さんは昨年3月に就任したギュンゲン大使にプレゼントをしたいと、スギ材で縦18センチ、横27センチ、厚さ2センチのネームプレートを製作。トルコ語で「ギュン」という言葉の意味である「日」と、「現」の音読みで「ゲン」を表現したという。

 受け取ったギュンゲン大使は「ありがとうございます。本当に気に入りました。執務室に飾らせていただきます」と感謝し、トルコの菓子をお返し。杉本さんは「直接お目にかかれるとは思っていなかったのですごく光栄。串本のことも愛されている人情味にあふれた方だと思った」と喜んでいた。