和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2024年12月23日(月)

みんなで楽しむ山をつくろう 和歌山県で森林の新たな活用計画

「みんなで楽しめる山」にしようと計画している和歌山県田辺市中辺路町の森林
「みんなで楽しめる山」にしようと計画している和歌山県田辺市中辺路町の森林
 和歌山県田辺市出身で埼玉県在住の会社員、千品喜嗣さん(44)が田辺市内に所有する森林を開放し、遊びや学びの場として誰もが楽しめるよう整備するプロジェクトを立ち上げた。まずは山へと続く道を造り、一緒に活用を考える仲間を集める。眠っている森林の新たな活用法を示したいという。


 整備を計画しているのは、田辺市中辺路町にある約20ヘクタールの山林。「斜面であり、単純な比較はできないが、東京ドーム4個分くらいの面積がある。アクセスも良く、多様な活用が期待できる」という。

 ただ、実際に「遊べる山」にするには、安全に行き来できる道が必要になる。尾根筋に沿って簡易的な登山道を付けるだけでも約400万円はかかる。マウンテンバイクを楽しむゾーン、水場やトイレ、駐車スペースなどの造成も考えるとさらに出費はかさむ。

 そこで、インターネットで資金を調達するクラウドファンディング(CF)を活用。1口2千円で1メートルの道が造れると協力を呼び掛けたところ、開始2日目で当初目標の30万円(150メートル分)を達成。目標を再度100万円(500メートル分)に設定して募集している。

 千品さんが、実家が山林を所有していることを知ったのは1999年。祖父が亡くなったことがきっかけだった。当時勤めていた会社を退職し、大学で林学を学びながら、所有山林の調査を始めた。大学卒業後も埼玉県と田辺市を行き来しながら、今後の活用法を研究し続けた。

 しかし、木材価格は低迷を続けていた。山林を所有し続けることに意味があるのかと疑問さえ生まれた。そんな中、山村の課題を新たな視点で解決しようと活動している人々と出会い、健康づくりや教育で「森林空間利用」というニーズがあると気付いた。

 「キャンプがしたい」「散策したい」「林業を体験したい」「マウンテンバイクに乗りたい」など山の遊び方を募集し、意見交換をしながら、一緒に山づくりを楽しむ仲間を集めたいという。

 千品さんは「森と人の距離を縮めたい。自然に触れ、木について考える人が増えることで、林業の現状も変わるはず。この取り組みが日本の森林が抱える課題の解決や、地域活性化の一助になればうれしい」と話している。

 来年3月ごろから道造りを始め、5月にはウオーキングイベントを開きたいという。

■CFで資金調達

 千品さんはCFサイト「モーションギャラリー」で資金を募っている。2千円を超える寄付額は税金の控除を受けることができる「ふるさと納税型」。返礼品は2千円でサンクスメール、1万円でクラフトビール3種類の詰め合わせ(県外用)など。募集は11月30日まで。