和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2024年12月16日(月)

自転車で熊野の振興を 専門家ら参加しシンポ

熊野の自転車ツーリズムをテーマに意見を交わした「クマイチ・シンポジウム」(和歌山県上富田町朝来で)
熊野の自転車ツーリズムをテーマに意見を交わした「クマイチ・シンポジウム」(和歌山県上富田町朝来で)
 和歌山県紀南地方の自転車ツーリズムについて考える「クマイチ・シンポジウム」が13日、上富田町朝来の上富田文化会館であった。自転車の専門家らによるパネルディスカッションでは、熊野の魅力や自転車ツーリズムの可能性などについて意見を交わした。

 上富田町を拠点に地域の活性化を目指す「紀州くちくまの未来創造機構」(浦聖治代表)が開いた。会場で聴講したのは招待客だけの約160人だったが、オンラインで23人が視聴した。来賓で県サイクリング協会副会長の鶴保庸介参院議員、仁坂吉伸知事、近畿運輸局の野澤和行局長らが出席した。

 機構は自転車を貸し出すサイクルステーション「KMICH(クミッチ)」を上富田町に開設。自転車ツーリズム事業を展開し、自転車で熊野を一周する「クマイチ」を、紀南地方の他の市町村や団体と連携して定着させることを目指している。

 機構の事業部門スタッフリーダーの瀬戸陽子さんが「クマイチ構想」について説明した後、意見交換をした。

 世界での自転車ツーリズムの状況について、自転車ツーリズムコンサルタントの宮内忍さんは「行楽シーズンの人気のアクティビティー。先進地ではルートが設定され、レンタルは必ずある」と説明。熊野での取り組みについては、白浜町出身の旅行作家、石田ゆうすけさんが「都会から遠いのでハンディだと思いがちだが、反対にディープさ(奥行きの深さ)が憧れになっている」、和歌山大学観光学部教授の加藤久美さんが「世界遺産の地として世界に知られていて、人を呼び込むためのポテンシャルは高い」と魅力的な地域であることを強調。宮内さんは「太平洋岸自転車道」が近く、日本を代表する自転車道に指定されることに触れ、「クマイチがその道と重なる。ますます注目度が上がるだろう」と期待した。

 課題については、全国や世界への発信を挙げる意見が多く、石田さんは「熊野巡礼を自転車でできるのは唯一無二。各地にアートを楽しめる場所をつくればより魅力が増す」と提案。プロロードレーサーの牧瀬翼さんは、地域の人々の自転車に対する理解を高める必要性を訴えた。

 講演も担当した石田さんは、熊野の魅力について「原始的で洗練された聖地。海外から来ると強烈にインパクトがある。それを自転車で巡って味わえる。アピールすれば人気のルートになる」と語った。

 最後に浦代表が、紀南のさらなる発展のため、関係する自治体や企業などが連携してクマイチを盛り上げていくことを宣言した。

 この後、モニターツアーの出発式があり、参加した40人が自転車に乗って一斉にスタート。3日間で白浜町やすさみ町、古座川町を巡った。