和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2024年11月16日(土)

森林と暮らし学ぶ 上山路小で紙すきのまとめ授業

奥野佳世さんを講師に招いて行われたまとめの授業(和歌山県田辺市龍神村東で)
奥野佳世さんを講師に招いて行われたまとめの授業(和歌山県田辺市龍神村東で)
 和歌山県田辺市龍神村東、上山路小学校の6年生はこのほど、森林の働きや製紙の歴史、地元でかつて生産されていた山路紙(さんじがみ)などについて外部講師から話を聞き、森林と暮らしについて理解を深めた。

 同校の6年生は、森林学習の一環で毎年卒業証書用の和紙をすいている。材料のコウゾの収穫から紙をすく体験まで紙作りの工程を教えているのが、戦後途絶えていた山路紙を復活させた龍神村東の造形作家、奥野誠さん(68)と妻の佳世さん(70)。

 卒業を控えた本年度の6年生11人は、すでに和紙をすく体験を済ませており、この日はまとめの授業として佳世さんが同校で講義をした。

 龍神村は、古くから紙すきが行われていたことやコウゾの産地であったことなど、山路紙の歴史について触れた。山路紙は張り合わせて大きな袋を作り、乾物などの食品保存や冬の防寒着にもするなど、山村の暮らしの中で生活用品としてさまざまな用途に使われていたと説明した。

 江戸時代の寛政年間に刊行された国東治兵衛の「紙漉重宝記図絵」を参考に、手すきコウゾ紙の作り方を説明し、紙の原料となるコウゾやミツマタの植物なども紹介した。

 西洋紙の需要が伸びていくことで山路紙のような全国にあった紙すきが消滅していったが、暮らしの中で生まれた紙にこそ、人々の文化を育んできた紙の基本の姿を見いだすことができると強調した。

 森林が洪水や土砂崩れを防いだり水を蓄え多様な生き物を育てたりするなどの働きについても解説し、暮らしの安全と豊かさに深いつながりのある森づくりの大切を述べた。

 佳世さんは「私たちは自然の一部でその恵みで生きている。これから自分たちがどう暮らしていくのか、自ら未来をつくる気持ちで考えてほしい」と呼び掛けた。