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「悲劇の継承」考える 和歌山大が防災シンポ、串本

パネルディスカッションで意見を交わす登壇者ら(20日、和歌山県串本町潮岬で)
パネルディスカッションで意見を交わす登壇者ら(20日、和歌山県串本町潮岬で)
 和歌山大学災害科学・レジリエンス共創センター主催の防災シンポジウムが20日、和歌山県串本町潮岬の南紀熊野ジオパークセンターであった。悲しみの記憶を巡る旅である「ダークツーリズム」の視点から、災害の教訓をどう未来に伝えていくかについて考えを深めた。


 和大と県、南紀熊野ジオパーク推進協議会は、今年2月に連携協定を締結。今回のシンポジウムはその記念として開いた。約40人が参加した。

 和大教授の此松昌彦さん、県災害対策課課長補佐の野口和典さん、金沢大学教授の井出明さんが講演。井出さんは「能登半島地震におけるダークツーリズムの可能性」と題して話した。

 ダークツーリズムとは、戦争や災害、虐殺の跡など人類の悲劇の記憶を訪ね歩く旅のこと。キリスト教に根差した「生と死」など、光と影の両面で世界を見ようとする欧米では浸透しており、自分たちにとって都合が悪い情報も伝承されているという。

 日本では「復興」や「再生」を重視し、負の面を隠そうとしがちだと指摘。例えば、震災被災地で公金の不正支出や詐欺などが起きていたことは復興博物館では紹介されず、復興過程の闇などの本質が見えなくなってしまうと述べた。

 「地域にとって都合の悪い記憶は、実は教訓に満ちている。日本が未来を考える上で、過去と向き合う方法論が必要。そのためのダークツーリズムだ」と締めくくった。

 続いて、パネルディスカッションがあり、井出さんと野口さんのほか、南紀熊野ジオパークガイドの会会長の仲江孝丸さんも登壇した。

 仲江さんは、津波の伝承と自主防災組織の取り組みを学ぶツアーを開いていることを紹介。橋杭岩など災害遺構でもあるジオサイトのほか、津波避難路や防災備蓄庫を巡りながら地震や津波について語り継いでいると話した。

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