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県立自然博物館の移転を断念 和歌山県、「水族館機能なし」案に海南市難色

 和歌山県立自然博物館(海南市船尾)の高台への移転を巡る問題で、県教育委員会の宮崎泉教育長は25日、県議会文教委員会で「移転を断念せざるを得ない」という見方を明らかにした。移転運営費用が高額になるため、県が移転先では水族館の機能を設けないと、当初案から変更したことから、海南市と合意に至らなかったという。

 同館は開館から40年以上経過し、施設が老朽化している。近い将来発生が予想される南海トラフ地震による津波被害の恐れがあり、収蔵可能なスペースが不足していることなどから、県が移転を計画。2022年度の「新政策」として進め、市は移転予定の内陸部の用地を取得し、造成工事も終えている。

 しかし、県は本年度予定していた基本設計の経費を、当初予算案に計上しなかった。2月議会の一般質問で岸本周平知事は「(移転先で)現在と同程度の水族館の展示を行う場合、高額の建設費に加え、海水の確保や排水に多大な経費が必要になる見通しとなった」と理解を促し、海南市と十分に協議していく考えを示した。

 その後、県教委が海南市などと協議を進める中、岸本知事は先日の会見で「水族館を山の上に造ることがほぼ不可能」とした上で「(県教委は)『自然科学博物館』みたいに『科学』が入って、(恐竜の化石やジオパーク、発酵食品、宇宙など)まさに今和歌山県が置かれている、自然科学のものを系統的に展示するようなアイデアを考えている」と説明。移転先では水族館を設けない案を示した。

 この発言を受け、藤山将材議員(自民、海南市海草郡)が25日の文教委員会で現在の状況を質問。宮崎教育長は「海南市と協議していたが、結果合意に至らなかった。移転を断念せざるを得ない」と述べた。

 藤山議員はさらに、市は、自然博の水族館機能存続のため、多額の費用をかけて移転先の土地を取得してきたのに、県の方針変更は納得のいく話ではないと指摘。宮崎教育長は「結果として海南市に迷惑をかけたと思っている」といい、今後は「現地での建て替えなど全ての可能性を含め、検討会を立ち上げて方向性を決めたい」と理解を求めた。

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