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和菓子店主、森山さん「現代の名工」 厚労相が表彰

「神島の鶴」のしおりに歌の使用許可をもらう際、南方熊楠の長女文枝さんに「神島に鶴は舞い降りますか」と聞かれ、「きっと舞い降ります」と答えたという
「神島の鶴」のしおりに歌の使用許可をもらう際、南方熊楠の長女文枝さんに「神島に鶴は舞い降りますか」と聞かれ、「きっと舞い降ります」と答えたという
 和歌山県田辺市北新町の和菓子店「富美堂」店主、森山昌彦さん(75)が、本年度の「卓越した技能者(現代の名工)」の厚生労働大臣表彰に選ばれた。

 技能者の地位や技能水準の向上を図り、将来を担う優秀な技能者の育成を進め、優れた技能を次世代に継承する目的で、その道の第一人者と認められる技能者を毎年表彰している。全国では本年度、150人が選ばれた。

 森山さんは1905(明治38)年創業「富美堂」の3代目店主。東京の洋菓子店で住み込みで学んだ後、20代後半で家業を継いだ。和菓子と洋菓子の1級技能士の国家資格を持ち、両方の手法を取り入れて、熊野や田辺をイメージした創作菓子を作ってきた。

 例えば田辺湾に浮かぶ神島に吉兆の象徴である鶴が舞い降りる様子をイメージした「神島の鶴」は、栗を黄みあんや小豆こしあん、さらに求肥生地で包み、マシュマロ生地でコーティングした和洋折衷菓子。口に入れると、ほのかに梅やゆずの香りがする。菓子に添えられたしおりには神島ゆかりの博物学者南方熊楠の歌が刷られている。2011年、田辺市であった全国植樹祭に訪れた天皇、皇后両陛下(現上皇ご夫妻)に献上した。

 現代の名工に選ばれたことについて「他の店にはない菓子をとの思いで作り続けてきた。創作の発想が評価されたのだと思う」と喜びをかみしめる。

 また、地域の文化や菓子業界の発展、後進の育成にも貢献。若手和菓子職人の指導をするほか、小学生への菓子教室では、手作りのおいしさを子どもたちに伝えている。

 「菓子には作り手の思いがこもる。お客さまに喜んでもらう、それ以上のことはない。これからも自分が思う形でおいしいものを生み出したい」

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