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私の視点―識者インタビュー― 参院選2022(1)/脱炭素/和歌山大学システム工学部教授/中島 敦司(なかしま あつし)さん(58)/森林生態学/具体的な行程と財源を

中島敦司さん
中島敦司さん
「私の視点」題字
「私の視点」題字
 参院選が始まった。「脱炭素」「投票率」「子育て支援」と長期の視点で取り組むべき課題について、専門家に意見を聞いた。


 ―日本は2030年に温室効果ガス排出量を13年比で46%削減、50年に完全なカーボンニュートラル(温室効果ガスの排出量と吸収量を等しくして、実質的にゼロにする)実現を目標としています。脱炭素は進んでいますか。

 日本は世界に比べ、後れを取っています。最近ようやく促進に向けたさまざまな制度が出てきました。特に経済産業省が力を入れています。

 ―脱炭素で環境と経済は両立するのでしょうか。

 今までは対立の構造で語られてきましたが、持続可能な社会をつくるため、経済が重要で、そのためには環境が必要。二つは実は親和性が高い。世界では脱炭素の取り組みに多額の投資マネーが動いています。この流れに取り残されると日本の企業は生き残れません。

 ―県内の中小企業にも影響はありますか。

 大企業はサプライチェーン(部品の調達・供給網)にも脱炭素を求めています。巡り巡って、県内企業も確実に影響します。

 印南町に米アップルのスマートフォン「iPhone(アイフォーン)」の画面に使われる光拡散フィルムを製造する日本企業の工場があります。アップル向け生産ラインで使う電力を太陽光や風力などの再生可能エネルギーに切り替えたことが話題になりました。自然エネルギー導入は最低条件で、その上で技術の勝負になるのです。

 ―個人レベルではどういう取り組みが考えられますか。

 目標実現には各家庭の電力は自然エネルギーで賄い、車は電気自動車(EV)に替える。それぐらいの取り組みが必要です。日本でもEV化が本格化してきます。

 和歌山県はEVの実験に最適です。平野が少なく坂道が多い。潮風にもさらされます。EVの苦手な環境でデータを取れば、普及に生かせます。過疎地ではガソリンスタンドが減少しています。急速充電器はガソリンスタンドを開設するよりずっと安価です。

 ―家庭用太陽光発電の固定価格買い取り制度(FIT)の期間が順次終了しています。今後も自然エネルギーは普及しますか。

 経産省の試算では30年時点の1キロワット当たりの発電コストは太陽光が最も安い。続いて風力です。自然エネルギーの方が、石炭や天然ガスによる火力、原子力より安い。普及させる方がお得です。

 ―脱炭素は争点としては注目度が低いと感じます。

 国の最重要課題の一つが、争点になっていないこと自体が問題。各党には脱炭素実現に向けた行程表と具体的な財源を示してもらい、見比べて投票できるようにしてもらいたいです。

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