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自然崇拝の世界観探る 串本でアピチャッポン監督の作品紹介

アピチャッポン監督の作品上映後に開いた座談会で、意見を交換する関係者(和歌山県串本町田並で)
アピチャッポン監督の作品上映後に開いた座談会で、意見を交換する関係者(和歌山県串本町田並で)
 和歌山県串本町田並の田並劇場はこのほど、カンヌ映画祭で最高賞などを受賞し、現代アーティストとしても注目されるタイのアピチャッポン・ウィーラセタクン監督に注目した上映会を2週にわたって開いた。研究者らを招いた講演会・座談会もあり、来場者が監督の世界観や「アニミズム(自然崇拝)」が息づく熊野との類似性についても考えた。

 「アピチャッポン特集! 熊野でアピチャッポンということ」と題した企画。紀南アートウイーク実行委員会との共催で、5日に「ブンミおじさんの森」を上映し「アピチャッポン その魅力」と題した講演会・座談会を開いた。

 12日は「光りの墓」を上映後、紀南アートウイーク実行委の藪本雄登実行委員長と田並劇場保存会の林澄蓮代表のほか、秋田公立美術大学(秋田市)の石倉敏明准教授(芸術人類学、神話学)がオンラインで参加し「アピチャッポンと熊野―アニミズムの世界へ」と題した座談会を開いた。

 石倉准教授は、突然眠ってしまう原因不明の病にかかった兵士たちの病院を舞台にした物語「光りの墓」の内容を説明し「他の映画監督ができていない実験が始まっている。非西洋的なもう一つの映画があるとすればどういうものなのかということを最も鮮明に開いていく、とても挑戦的で先進的な作品」などと解説した。

 藪本さんは熊野について「梅原猛らが日本の原郷だという言葉を残しているが、無社殿型の神社が多く、芳醇(ほうじゅん)なアニミズムの思想が残っている」と述べ、アニミズムを信仰する少数民族が住む東南アジア大陸部(タイ、ベトナムなど)と中国南部の山岳地帯を意味する「ゾミア」との歴史的なつながりや類似性を指摘。石倉准教授も「熊野には漂着神伝説が非常に多い。東南アジアの神話と熊野の神話を比較するのは、とてもユニークで面白いポイントの一つになる」などと述べた。

 また、石倉准教授は「アピチャッポンの映画では魂が行ったり来たりする状況が生まれており、それはまさにアニミズムという有機体を超えた世界観」と指摘。林代表も自身の体験を通じて「目に見えない世界につながることが、実は未来につながっていると感じる」などと述べた。

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