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食文化史の研究さらに深めたい 熊楠賞授賞式で江原さん

真砂充敏田辺市長(左)からトロフィーを手渡された江原絢子さん=和歌山県田辺市新屋敷町で
真砂充敏田辺市長(左)からトロフィーを手渡された江原絢子さん=和歌山県田辺市新屋敷町で
 第32回「南方熊楠賞」(和歌山県田辺市、南方熊楠顕彰会主催)を受賞した東京家政学院大学名誉教授、江原絢子さん(79)の授賞式が14日、田辺市新屋敷町の紀南文化会館であった。顕彰会会長の真砂充敏市長からトロフィーを手渡された江原さんは「受賞を支えに、さらに研究を深めたい」と喜びを語った。

 江原さんは食文化史が専門。江戸時代や近代の料理書に書かれた料理を再現し、江戸時代の名家の料理や各地の郷土料理を調査。「調理」という作り手の視点から和食文化を探求し、学術領域としての確立に大きく貢献してきた。

 式典後は記念講演があり、「自然を尊重するなかで育まれた日本の食」と題して話した。

 冒頭、江原さんは熊楠が残した日記を紹介。牛肉が好物でよく食べていたことがうかがえるが、同時代の和歌山市民の牛肉の年間消費量も全国平均を大きく上回るという。

 2013年にユネスコ無形文化遺産に登録された「和食」文化は、「自然の尊重」が基本的な精神となっていると解説。温暖で高温多湿・雨が多い気候から多様な農産物が育てられてきたこと、海に囲まれた地形からさまざまな魚介類や海藻類が取れること、豊富で良質な水に恵まれていたこと―によって、そうした食文化が特徴付けられたと話した。

 江戸時代の料理書から見えてくる、当時の料理の特色についても言及。多様な食材を利用し、菓子以外には砂糖をほとんど使わなかったという。実際に作ってみると「砂糖を入れてしまうと気付かない食材のうまみや甘さがあることが感じ取れた」と語った。



 熊楠賞は、世界的な博物学者で後半生を田辺市で過ごした南方熊楠(1867~1941)にちなみ、民俗学や博物学で業績のある研究者に贈る。受賞は江原さんで35人目。

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