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新たな技術で真妻ワサビ量産へ 和歌山県、発祥の地で試験

活性炭など土壌改良材の割合を工夫したコンテナにだるま系ワサビの苗を植える研究員(和歌山県上富田町生馬で)
活性炭など土壌改良材の割合を工夫したコンテナにだるま系ワサビの苗を植える研究員(和歌山県上富田町生馬で)
大きく成長した沢ワサビの根茎
大きく成長した沢ワサビの根茎
 和歌山県林業試験場(上富田町)は、高級品種「真妻ワサビ」の発祥の地である印南町真妻地域の活性化のため、新たなワサビ栽培の技術開発で量産を目指す。手始めに畑栽培(畑ワサビ)で根茎(芋)が肥大するよう、水やりや土壌改良材を工夫した栽培方法を試す。試験場は「芋は流水栽培(沢ワサビ)でしか収穫できないが、畑栽培でも収穫できれば生産の拡大が見込め、新規参入もしやすくなる」と期待している。


 ワサビは、自身が出すアレロパシー物質(アリルイソチオシアネート)で自家中毒を起こす。このため、畑ワサビでは土壌にその物質が蓄積して芋が肥大せず、主に茎や葉を収穫することになる。一方、沢ワサビは流水でその物質が洗い流され、阻害を受けずに芋が大きく育つといわれている。

 今回の試験では「平井わさび園」(印南町川又、平井健さん経営)に協力してもらい、試験用のハウスを試験場と平井さんの園地につくった。「真妻系」のワサビは収穫まで約2年半かかるため、試験では、1年ほどで収穫できる現在の主力品種「だるま系」のワサビを使っている。

 土壌に蓄積するアレロパシー物質を定期的な水やりで洗い流し、さらに活性炭などの土壌改良材によって吸着させることで、芋の肥大を促す。畑ワサビと沢ワサビの特徴を併せ持つ方法を確立したいとしている。

 水やりは5分やって15分止めることを繰り返すなど、間隔を取りながら連続して行う。土壌改良材は、ヤシ殻活性炭をメインにもみ殻くん炭、木炭、ゼオライトなどを、さまざまな割合で混ぜて最適なものを探す。

 県内のワサビ栽培は、真妻地域を中心に、明治時代から行われてきた。この地域ではかつて、15戸の農家が計約1ヘクタールで沢ワサビを栽培していたという。しかし、湧水の減少や水害被害などによって栽培適地が減少。後継者不足などもあり、現在、専業は「平井わさび園」1戸になっている。

■真妻ワサビ

 全国で有名になった由縁は、ワサビの主産地である静岡県が1958年の台風で壊滅的な被害に遭ったことに始まる。静岡県の生産者が新たな苗を求めて真妻地域を訪れ、芋が大きく紫色をしているなど特徴的な系統をいくつか持ち帰った。静岡県で選抜と育成が繰り返され「真妻系」品種が誕生した。真妻ワサビを導入した静岡県は産地として復興。無名だった真妻地域のワサビは「真妻ワサビ」と呼ばれ、最高級ワサビの代名詞となった。

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