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新作能「アマビエ」上演 新型コロナの終息祈る

新作能「アマビエ」の一場面(13日、和歌山県田辺市扇ケ浜で)
新作能「アマビエ」の一場面(13日、和歌山県田辺市扇ケ浜で)
 新型コロナウイルス感染症の平癒を祈願して創作された新作能「アマビエ」が13日夕、和歌山県田辺市扇ケ浜のカッパークで上演された。訪れた人たちは小鼓、大鼓、太鼓、笛の音色に聞き入り、主役の動きに見入るなどして能を楽しんだ。

 田辺青耀会代表で能楽師の上田悟さん=大阪府和泉市=が主催、文化庁の文化芸術活動の継続支援事業として実施された。9月から始まり、関西の9カ所で上演される。

 「アマビエ」は肥後国(現在の熊本県)に江戸時代から伝わる半人半魚の妖怪。疫病を鎮めると伝えられ「私の姿を写して人々に見せよ」と予言して海へ帰ったとされる。

 新作能は、悟さんの次男で能楽師の上田敦史さん=兵庫県丹波市=が創作した。敦史さんは会場で「アマビエは妖怪とされるが、海の神様の使いであり、コロナが収められたと考えた」と新作能の概要について説明した。

 その上で、新型コロナに対する不安が今も社会に渦巻く中「さまざまな情報に振り回される人の様子を見て、その方が怖いと思った。『アマビエ』のテーマは自分の内側に向けてアマビエの姿を写そうということ」と述べ、こんな時こそ自分自身を見失うことなく、人を思いやる心を持ってほしいと呼び掛けた。

 野外ステージでは能楽師11人が登場。謡と笛や小鼓、大鼓、太鼓によるおはやしとともに、主役のアマビエが現れた。来場者は身を乗り出すようにして目と耳を傾けていた。

 友人と訪れた田辺市中万呂の女性(67)は「アマビエが登場すると舞台の雰囲気が変わり、不思議な空間と時間を体験させてもらった。笛、鼓、太鼓の張り詰めた音色にも引き込まれた。海のそばのステージで、日が暮れゆく中での上演も最高だった」と感激した様子で話した。

 この日は人気のある能の演目「道成寺」の内容を組曲にした能楽器のコンサートもあった。また、新型コロナ感染予防のため、来場者の検温をした上で座席数を80に限定し、間隔を空けて座った。

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