「鯨とともに生きる」セミナー
和歌山県太地町太地の国際鯨類施設研修ホールで10日、日本遺産「鯨とともに生きる」の公開セミナーがあった。熊野灘地域の捕鯨の歴史や文化に理解を深めてもらおうと、「熊野灘捕鯨文化継承協議会」(会長=鳥羽真司東牟婁振興局長)が開催。新宮・東牟婁の市町職員やガイド関係者ら約70人が受講した。
太地町歴史資料室の櫻井敬人学芸員や日本鯨類研究所の井上聡子研究員、日本小型捕鯨協会の貝良文会長がそれぞれの研究成果や実績を講演した。
■古式捕鯨の歴史解説
櫻井学芸員は熊野の古式捕鯨の歴史について解説。江戸時代、クジラ漁を目的とした漁民でつくる鯨組は「六鯨」(ろくげい、6種類のクジラ)をターゲットにしていた。海の入り込んだ部分だったり、広い海に網を張ったりして追い込み、もりを打ち込むまでは同じだが、それぞれ捕獲方法が異なっていたという。
古式捕鯨においてさまざまな文献で共通しているのは、「クジラを沈ませないこと」だといい、網をかけてからもりを打つという画期的な方法が開発され工夫が進んだ。
また、1606年に古式捕鯨が始まったとされていることについて「急に始まることはない。それまでにもクジラを捕ることがあった」と強調。師崎(愛知県)の人と何らかの関わりがなければ古式捕鯨は始まらなかったこと、江戸時代になって物流が盛んになり、経済先進地域の大阪などでクジラの肉が消費されるようになったことを紹介した。
井上研究員は熊野灘周辺で生息しているのはヒゲクジラ類5種、ハクジラ類17種で、日本で見られるクジラの半分以上の種があること、熊野灘には季節的に回遊していたり、定住していたりしていると生態について説明した。
コビレゴンドウは高い水温を好み、黒潮が蛇行すると熊野灘での発見がほぼなくなるといった研究結果も示し、黒潮大蛇行が記録的に長期化していることから、調査を続ける必要があると述べた。
貝会長は、太地町漁協の専務理事も務めており、セミナーでは捕鯨船での作業内容や町漁協の取り組み、反捕鯨団体の過去の活動など捕鯨の現在について語った。実際に解体するために使う大包丁や、脊椎を切断するナイフを見せて来場者の興味を引いた。
また、クジラの供養祭を開いていることも伝え「命あるものを頂いて、私たちが生かされている」と話した。
◇
日本遺産は、地域の歴史的魅力や特色を通じて、日本の伝統・文化を語るストーリーを文化庁が認定する制度。有形・無形の文化財を活用して地域振興につなげることを目的に2015年に創設され、昨年末現在で104件が認定された。
「鯨とともに生きる」は16年に県内で初めて登録された。「河内祭の御舟行事」(串本町)や「鯨供養碑」(太地町)など、新宮、那智勝浦、太地、串本の4市町にある29の文化財で構成されている。
太地町歴史資料室の櫻井敬人学芸員や日本鯨類研究所の井上聡子研究員、日本小型捕鯨協会の貝良文会長がそれぞれの研究成果や実績を講演した。
■古式捕鯨の歴史解説
櫻井学芸員は熊野の古式捕鯨の歴史について解説。江戸時代、クジラ漁を目的とした漁民でつくる鯨組は「六鯨」(ろくげい、6種類のクジラ)をターゲットにしていた。海の入り込んだ部分だったり、広い海に網を張ったりして追い込み、もりを打ち込むまでは同じだが、それぞれ捕獲方法が異なっていたという。
古式捕鯨においてさまざまな文献で共通しているのは、「クジラを沈ませないこと」だといい、網をかけてからもりを打つという画期的な方法が開発され工夫が進んだ。
また、1606年に古式捕鯨が始まったとされていることについて「急に始まることはない。それまでにもクジラを捕ることがあった」と強調。師崎(愛知県)の人と何らかの関わりがなければ古式捕鯨は始まらなかったこと、江戸時代になって物流が盛んになり、経済先進地域の大阪などでクジラの肉が消費されるようになったことを紹介した。
井上研究員は熊野灘周辺で生息しているのはヒゲクジラ類5種、ハクジラ類17種で、日本で見られるクジラの半分以上の種があること、熊野灘には季節的に回遊していたり、定住していたりしていると生態について説明した。
コビレゴンドウは高い水温を好み、黒潮が蛇行すると熊野灘での発見がほぼなくなるといった研究結果も示し、黒潮大蛇行が記録的に長期化していることから、調査を続ける必要があると述べた。
貝会長は、太地町漁協の専務理事も務めており、セミナーでは捕鯨船での作業内容や町漁協の取り組み、反捕鯨団体の過去の活動など捕鯨の現在について語った。実際に解体するために使う大包丁や、脊椎を切断するナイフを見せて来場者の興味を引いた。
また、クジラの供養祭を開いていることも伝え「命あるものを頂いて、私たちが生かされている」と話した。
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日本遺産は、地域の歴史的魅力や特色を通じて、日本の伝統・文化を語るストーリーを文化庁が認定する制度。有形・無形の文化財を活用して地域振興につなげることを目的に2015年に創設され、昨年末現在で104件が認定された。
「鯨とともに生きる」は16年に県内で初めて登録された。「河内祭の御舟行事」(串本町)や「鯨供養碑」(太地町)など、新宮、那智勝浦、太地、串本の4市町にある29の文化財で構成されている。