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“盛る”のではなく“顔のバランスを決める”、 「繊細な技術が必要になった」詐欺メイクの今

まるでトリックアートのよう…涙袋がない左半分、涙袋がある右半分
まるでトリックアートのよう…涙袋がない左半分、涙袋がある右半分
 詐欺メイクや整形級メイクというキーワードが流行った当時、メイクの基本軸は「いかに盛るか」「目を大きくするか」がテーマに。しかし、マスク外しが解禁された2022年頃からは、整形の施術をメイクにも反映する「中顔面短縮」の考え方が広がり、顔全体のバランスを見た上で目と唇の距離を近づけたり、頬のボリュームをダウンさせるようにチークやシャドウを入れたり、人中(鼻と唇の距離)を短くしたりと”繊細なメイク技術”が必要になりました。詐欺メイクに対応したアイテムも多数登場し、“詐欺”というキーワードが入った商品まで登場しています。今の詐欺メイクアイテムは、いかに変化しているのでしょうか?  

【写真】半顔メイクの結果がエグイ…「目の大きさ2倍」「加工かと思った」

■韓国アイドルのメイクが指示され、「人中短縮」の考え方が加速

 話を聞いたのは、「アイホリック」というアイメイクのブランドでペンシルアイライナーを企画・開発しているスタイリングライフ・ホールディングス BCLカンパニー 商品開発本部 企画2部課長の小川麻衣さん。中顔面短縮を叶えるために目幅を拡張するペンシルアイライナーとして、パッケージに「粘膜詐欺」と打ち出した商品を発売し、話題を集めました。

――以前の詐欺メイクは「いかにパーツを大きくするか」が重要視されていましたが、今は「顔全体のバランスを見る」方向に変わってきました。こうした変化の兆しが見えたのは、どのタイミングだったと感じますか?

「まず一つは、コロナ禍のマスクで、アイメイクに再注目するようになったことがあります。また自分自身の経験でもありますが、自分がマスクした顔を見なれている状態でパッと外した時に『あれ、こんな顔だっけ?』と思い、改めて自分の顔のバランスが気になるようになりました。世の中の女性たちもマスクをしていた期間を経て、もう一度『目元を可愛くしていきたい』欲求が高まったのではないかと。今ではマスクを外してリップを盛りたくなってきていると思いますし、マスクというのはかなりメイクのトレンドに寄与しているのかなと思います」

――コロナ禍でマスク生活に切り替わったことで、顔のパーツで出ている部分が“目元だけ”になった経緯があります。出ているパーツだからこそ、目元のメイクにどんなトレンドの変化が起きたと感じますか?

「みんながこだわっていたのは、涙袋と眉毛だと思います。眉毛関連の製品の売り上げもすごく良かったですし。アイメイクでいうと、マスクの湿気でカールが落ちてしまうので、そのあたりから耐久性のあるマスカラやアイライナーもすごく注目されるようになりました。トレンドとして大きく何かが変わったというよりも、シンプルに『眉と目はよく見えるので綺麗ににメイクをしたい』とか『耐久性の落ちにくいものを使おう』という意識が出てきたのかなと思っています」

――メイク用語として「人中短縮メイク」「中顔面短縮メイク」というキーワードも出てきました。「顔全体のバランスを見た上で、トリックアートのようなメイク技術で“詐欺る”」という考え方がトレンドの一つになったのは、どのような要因があったからだと感じますか?

「2020年前後に韓国アイドルのメイクが日本の女性たちから支持されて、その手の情報発信も増え、また日本の市場でも韓国のアイテムが買えるようになってきました。そこで『人中短縮メイク』が日本でも広がり、さらにマスクが取れ始めたことによって、改めて『顔全体のバランスを考える』トレンドが加速したのかなと思います。基本的には、韓国や韓国アイドルへの憧れを持つ若い世代がかなり増えたことから、メイクのトレンドが変わったのかなと」

■オーバーリップに、眉毛用のコンシーラーもヒット「商品が細分化し、今後もたくさん広がっていく」

――アイホリックとして「アイホリック ラメペンシル ツヤぷくベージュ」を発売したのが、コロナ後のタイミング(2022年10月)でした。商品開発にあたって、世の中の流れ、メイクトレンドなど、どのように考慮してアウトプットしていきましたか?

「まずは涙袋を作るのがアイシャドウではなく”コンシーラー”であることです。そうすることで、より自然に、本物であるかのように見せるようになりました。あと、従来の詐欺メイクは複数のアイテムを駆使するものでしたが、ペンシルと筆が一体になっている設計なので、1本で涙袋メイクができるという点がポイントとなっています」

――「涙袋爆誕」という特徴的なコピーも非常に目を引いたと思いますが、商品発売後、ユーザーからの反響など、印象に残っているコメントがあればお聞かせください。

「特に大きく宣伝をせずに発売したのですが、やはり『涙袋爆誕ってコピーを見て買ってみた』というコメントがすごく多くて。このコピーの強さは、お客様が目に留めてくださった大きな要因だったと思います。いろいろな商品を使い比べてレビューされる方も増えている中で、『一番超自然に使える』『自然に涙袋ができた』という声もたくさんいただいています。元々”盛る”タイプの方には少し物足りないくらいの色味で作っていますが、涙袋メイクに慣れていない方にとっては取り込みやすいカラーリングだったと思います。そこは他社さんとの差別化にもなっています」

――今後のコスメ市場において、「詐欺メイク」に関連する商品はどのように変化し、伸びていくと思われますか?

「今はオーバーリップをして唇をぽってり見せるトレンドが来ています。さらに、眉毛を消すコンシーラーもヒットしています。一度自眉の色を消した後に眉マスカラを重ねるのですが、自分の黒い眉毛の上に色を重ねただけでは、どうしても眉毛の存在感がうまく消せません。でも1回消してそこに色を乗せると、今どきの透明感のある発色の眉ができます。

 このように、今は本当に商品が細分化していて、今後もたくさん広がっていくと思います。メーカーが想定してないトレンドもかなり出てくるでしょうし、そこにお客様の注目も集まっていくと思います。韓国だけでなく中国のメーカーもすごくテクニカルで非常に面白いので、お客様もメーカーも日々情報収集をして新たなメイクの手法が生み出されていくと感じています」

文:水野幸則

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