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人工ふ化のチョウザメ全て雌 近大、キャビアの効率生産に道

実験に使ったシベリアチョウザメ(近畿大学提供)
実験に使ったシベリアチョウザメ(近畿大学提供)
 近畿大学水産研究所新宮実験場(和歌山県新宮市高田)は、人工ふ化したチョウザメに女性ホルモンを与えることで、すべての個体を雌にすることに日本で初めて成功した。チョウザメの卵は高級食材キャビアになり、雌雄選別を省くことで効率生産につながるという。場長の稲野俊直准教授(54)は「さらにコストダウンを図り、一般の食卓にキャビアが上がるようにしたい。5年後をめどに実用化を目指す」と話している。

 養殖チョウザメからキャビアを生産するには長い年月を要する上、雌雄を判別するにも時間とコストがかかる。そのため、すべての卵が雌になる「超雌」を生産する技術の開発に取り組んでいる。今回はその研究の中で確認された。

 稲野准教授らは2017年12月、ドイツからシベリアチョウザメの受精卵を輸入し、人工ふ化させた。18年4月から半年間、150匹に女性ホルモンを混ぜた配合飼料を与え、19年11月ごろまで通常の配合飼料で飼育した。この中から無作為に45匹を選んで生殖腺の形状を確認したところ、すべての個体で卵細胞が確認され、雌であることが分かった。今後、残りの個体を3年飼育して卵が正常に形成されるかを確かめる。

 雌雄を選別するには通常、生後3年程度のチョウザメを1匹ずつ池から取り上げ、腹部を切って生殖腺を目視で確認、縫合して池に戻すという作業が必要になる。この作業には5人ほどが必要で、千匹をチェックするのにベテランでも1カ月以上かかるという。全雌化することでこの工程が省略できる。

 今回は女性ホルモンを混ぜた配合飼料を用いたが、今春からは女性ホルモンに代わる食品由来の成分「大豆イソフラボン」を使って実証実験を行う。



 近大では現在、オオチョウザメとコチョウザメの交雑種ベステルから「近大キャビア」を生産して限定販売している。交雑種であるため繁殖能力の低下が懸念されることから、純粋種であるシベリアチョウザメの研究に取り組んでいる。このチョウザメは環境変化への対応力が高く、世界で最も多く飼育されている中型。ロシアの寒冷地に生息するが、水温が30度近くになる日本の環境にも対応する。近大では重さ10キロほどに育て、約1キロのキャビアの採取を目標にしている。

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