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地質から巨大地震、津波学ぶ 南紀ジオセンターで講演

講演する宍倉正展さん(和歌山県串本町潮岬で)
講演する宍倉正展さん(和歌山県串本町潮岬で)
 和歌山県串本町潮岬の南紀熊野ジオパークセンターで19日、国立研究開発法人産業技術総合研究所の宍倉正展さんが「南紀の海岸に遺された過去の南海トラフ巨大地震の痕跡」をテーマに講演した。宍倉さんは「地盤の成り立ちを知り、災害の歴史を学ぶことが防災の第一歩」と述べ、センターを活用して地質を学んでほしいと呼び掛けた。

 宍倉さんは、地質から過去の地震を学ぼうと、橋杭岩(串本町くじの川)周辺に散らばった大小の岩石(津波石)、その岩肌に付いているフジツボやカキの化石を調査。津波石は17~18世紀(1707年宝永地震)と12~14世紀(1361年正平地震か未知の地震)に動いたことが分かったという。

 九龍島(串本町古座)や鈴島(新宮市三輪崎)の岩肌に張り付いた生物の痕跡からは、地盤が隆起したことが分かり、津波石と同じ年代だけではなく、記録にはない3世紀ごろにも隆起した痕跡が見つかったと話した。

 笠嶋遺跡(串本町串本)でボーリング調査をしたところ、遺跡は3世紀ごろの津波堆積物で埋没したことが分かったほか、400~千年間隔で津波に襲われている痕跡が見つかったと報告。那智勝浦町八尺鏡野の湿地での調査では、現在、津波による浸水が想定されていない場所でも津波堆積物が見つかっていると話した。

 宍倉さんは、インターネット上でよく目にする日付け指定の地震予測はすべてデマで、地震雲や動物の異常行動などの情報は科学的根拠がないと強調。一方「1カ月以内に震度5弱以上の地震が起こる」「今年中に震度6弱以上地震が起こる」などの予測は統計上、大抵が当たると述べた。

 現在の科学では地震を正確に予測できないが、過去の記録や歴史からは学ぶことができると説明。南海トラフで起きた地震は、過去9回分の記録があり、100~200年周期で発生している。計算上、次は15~17年後に起こることになっていると説明。この予測も確実ではないが、少なくとも今世紀中には確実に起こると話した。

 過去の記録に地震前に地下水が低下したなどの記述はあるが、次の地震でも同じ前兆があるとは限らないと述べ「当てにせず、普段から地震に備えておくことが大切」と話した。

 現在、熊野灘沖などに設置されている「地震・津波観測監視システム(DONET)」は、次の地震が予測できなかったとしても、次の次の地震には役に立つと説明。ジオパークセンターがある潮岬は、大昔から繰り返し地震が起きることで12万年前ごろにできた標高50~70メートルの段丘であると述べ「われわれは地震や火山のおかげでできた大地で生きている」と話した。

 来場者から、先日、南海トラフ沿いで地震計では捉えられない「ゆっくり滑り(スロースリップ)」が2008~18年に少なくとも4回発生したのが観測されたとの報道があったことについて質問があった。宍倉さんは「ゆっくり滑り」の観測は、科学の進歩で、これまで観測できなかったことが見えてきたということで、ずっと起きていた可能性もあると説明。現時点で次の地震発生との関係は分からないが、その動きを捉えられるようになったことが画期的だと述べた。

 この日はセンター主催の3回目の講演会で、町内外から約90人が来場した。宍倉さんは、研究所の地質調査総合センター活断層・火山研究部門海溝型地震履歴研究グループのグループ長を務めている。

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