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日本人監督と日本のスタジオで作り上げるハリウッド超大作『ロード・オブ・ザ・リング』新作が「手描きアニメーション」であるこだわり

『ロード・オブ・ザ・リング/ローハンの戦い』制作報告会見に出席した神山健治監督、SOLA ENTERTAINMENT代表のジョセフ・チョウ氏
『ロード・オブ・ザ・リング/ローハンの戦い』制作報告会見に出席した神山健治監督、SOLA ENTERTAINMENT代表のジョセフ・チョウ氏
 J・R・R・トールキンの原作をもとに、ピーター・ジャクソン(監督・共同脚本)によって映画史にその名を刻んだファンタジー超大作『ロード・オブ・ザ・リング』3部作。2004年の『王の帰還』日本公開から20年の時を経て、『ロード・オブ・ザ・リング』の知られざる200年前の伝説の戦いを、シリーズ初の長編アニメーションで映画化した『ロード・オブ・ザ・リング/ローハンの戦い』が12月27日に公開される。ハリウッド超大作である新作の制作報告会見が11日、都内で開催された。

【動画】『ロード・オブ・ザ・リング/ローハンの戦い』初映像

 会見に出席したのは、監督に抜てきされた『東のエデン』『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』などで知られる神山健治氏と、アニメーションを手がけるSOLA ENTERTAINMENTの代表で本作のプロデューサーを務めるジョセフ・チョウ氏。

■原作の物語を基にした新たな展開と映画オリジナル要素

 『ロード・オブ・ザ・リング』のアニメーション映画化と神山監督へのオファーの経緯についてジョセフ氏は「6、7年前に神山監督と共同でNETFLIXの『ULTRAMAN』と『攻殻機動隊 sac_2045』を作ることになったのですが、その時点で大きなIPをアニメ化することに興味を持っていました。そのうちに『ロード・オブ・ザ・リング』の企画が挙がってきまして。SF作品をアニメ化しようという動きはよくあるのですが、ファンタジー作品を日本のアニメとして挑戦してみるというのは今までなく、『やる』という選択肢を選びました。そこで『誰と一緒に?』となった時に、どう考えても日本アニメーションの第一人者であり、脚本を作成することもできる神山監督しかいないと思いました」と話した。

 このオファーを引き受けた理由について神山監督は「『ロード・オブ・ザ・リング』は『ホビット』も含め大好きな作品で一ファンとして観ていましたし、それを映画として(改めて)作れるチャンスってなかなかないだろうと思い、やるべきチャレンジだと思いました」と振り返った。

 『ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔』(02年)で描かれたローハンや、角笛城を舞台に、壮大な戦いが繰り広げられる本作。神山監督は「あの指輪を巡る物語の200年前、ローハン建国以来9代目の王様であるヘルム王でその血筋が途絶えてしまう物語がありまして、そのお話を今回は映画にしようと考えました。原作には11ページくらいしかない物語を映画化するにあたってもう少し内容を広げないといけなくなり、3人いるヘルムの子どものうちの末っ子の娘を主人公にした」と説明した。

 原作にはない部分で映画オリジナルのエピソードをつくり上げた。原作には末っ子の娘に名前もなく、「映画オリジナルキャラクターとしてヘラを追加しました」。本作のヴィランであるウルフに関しても「ローハンを統べている部族とは別の部族で、彼らを束ねている長の息子、敵役としての主役です」と紹介した。

■潜在的に伝わる手描きのすごみ 実写3部作と同じ力強さを

 本作の製作総指揮は、実写『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズを手がけたピーター・ジャクソン、プロデューサーとして同じく全シリーズの脚本を手掛けたフィリッパ・ボウエンが名を連ねている。

 実写版の世界観を手描きアニメーションで完全に再現するため、ニュージーランドの「スタジオWETAデジタル」が全面協力。実写のプロップスのすべてを提供してもらうという異例のサポートも受けたという。まるで実写と差異が無いほど細かく作り上げたという絵コンテについて神山監督は「200年前の世界と本作をどのようにつなげるかを考えたのはもちろんなのですが、それとは別に『ロード・オブ・ザ・リング』ファンがニヤッとするような仕掛けもいくつか仕込めたと思います」と細部へのこだわりを語った。

 モーションキャプチャーを使用しての撮影後にCGシーンを撮影、それらをベースに手描きのアニメーションを作り上げていくという映画3本分の労力を費やした。すべて手描きで作成される長編アニメーションは、スタジオジブリとSOLAスタジオのみのようなのだが、この工程について神山監督は「実写3部作を25年前に観たとき『すごい映画だ』という印象がとにかく残っており、それを(本作でも)なんとしても死守しなければならないと感じました。ヘタなものは作れないと思いましたし、『当時のあの体験をもう一度してもらいたい』と思いました。そのため、最終的には従来の日本のアニメの作画で描いています」と明かした。

 手描きの手法がマッチすると思いついた理由については「ゴラムや戦いのシーンなど、実写3部作ではCGとはわからないくらいの凄さを感じましたが、アニメを作るうえでCGのみで作成してしまうと苦労と凄みがスクリーンに映らないのではないかというのが僕の思いで。手描きだと潜在的に伝わるというか、映画に凄みが増す気がしており、実写3部作と同じ力強さが宿るのでは?とひしひしと感じたからです」と説明していた。

■世界中で日本語吹替版のリクエスト

 本作は全米で3000館以上、世界で数万スクリーンに及ぶ拡大上映が決定している“ハリウッド超大作”だが、世界中から日本語吹替版での上映リクエストが世界中から来ているそう。近年、海外では日本で制作されたアニメを日本語音声で視聴することが「本物のアニメ体験」として人気が高まっている。

 本作は「先に英語版を作って日本の声優さんに声をあててもらうので、洋画の吹替に近いのかなと思うんですが、日本の監督、スタジオ、スタイルのアニメーションの手法で作ってますので不思議な感じはあったが、改めてやってみるとしっくりくる感じがありました」(神山監督)と、日本語吹替版の手応えも語っていた。

 ジョセフ氏は「アニメは海外で一つのムーブメントとなっていて、文化的で影響力のある日本のコンテンツです。『ロード・オブ・ザ・リング』を、アニメを通して制作できるチャンスをいただけて感謝しています。監督含め実現不可能だとお互いにいいながら作り上げた作品です(笑)。『ロード・オブ・ザ・リング』のファンの皆さんはもちろんですが、あくまで1つの日本のアニメーション映画として観ていただきたいです。ご期待いただければと思います」とアピール。神山監督は「今は観ていただきたいという気持ちでいっぱいです」と力強く締めくくった。

■日本語吹替版キャストを追加発表

 日本語版キャストの追加発表もあった。ヘルム王の甥・フレアラフ役に中村悠一、エオウィン役に坂本真綾、ウルフの父・フレカ役に斧アツシ、ヘルム王の第一王子・ハレス役に森川智之、第二王子・ハマ役に入野自由、フレカの忠実な右腕・ターグ将軍役に山寺宏一、老ペニクルック役に沢田敏子、ヘルム王の側近・ソーン卿役に大塚芳忠、凶暴なオーク・シャンク役に飯泉征貴、魔法使い・サルマン役に勝部演之が新たに発表された。

 既報の、騎士の国ローハンの偉大なるヘルム王役の市村正親、王国の運命を託される主人公の王女ヘラ役の小芝風花、ヘラの幼なじみであり王国の脅威となるウルフ役の津田健次郎、王女ヘラを支えるオルウィン役の本田貴子、物語の関わる重要なキャラクターのオーク、ロット役の村治学、ローハンの従者リーフ役の田谷隼と合わせ、実写『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズに吹替キャストとして参加した経歴をもつ声優も多く名を連ねるキャストが日本人監督と日本のスタジオによって作り上げられた、『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズの新作に命を吹き込む。

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