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若手支援で好循環を 新庄第二小の教科担任制、和歌山県田辺市

職員室で授業の進め方を話し合う教員たち(和歌山県田辺市新庄町で)
職員室で授業の進め方を話し合う教員たち(和歌山県田辺市新庄町で)
 長時間労働の是正や業務の効率化など、教員の働き方改革が社会的な課題となる中、和歌山県田辺市新庄町の新庄第二小学校では、若手教員の支援に重点を置いた「教科担任制」を導入し、職場環境の改善に取り組んでいる。従来の仕組みを見直して学校に好循環を生み出そうと、現場では模索が続いている。


 学校では経験の浅い教員であっても、学級担任など責任の重い役割を担うことが多い。特に小学校では学級担任がほぼ全ての教科を教えるため、若手教員の負担が大きくなりやすい。授業以外にも生活指導、会議、研修のリポート作成、保護者対応など、業務は多岐にわたる。多忙の中、精神的に追い詰められて孤立してしまうケースもある。

 新庄第二小は児童数126人の小規模校。近年、若手教員の割合が高い状態が続いている。本年度は学級担任8人(各学年1学級、特別支援2学級)のうち、5人が教員歴10年未満だ。

 若手支援を強化し、学校全体をより良くしようと、新庄第二小が2022年度から取り組んでいるのが「教科担任制」。中学校のように、1人の教員が教科別に複数の学級で授業をする仕組みだ。22、23年度は5、6年生で実施、本年度は3、4年生にも拡大した。若手教員にとっては、自分が担任する学級に他の教員に関わってもらえ、学級づくりや児童理解のサポートを受けやすくなるといったメリットがある。

 教科担任制について、同校が今年7月に実施した現場教員へのアンケートでも「いろいろな先生に関わってもらえ、自分の学級の様子を客観的に見ることができる」といった声があった。

■「学校担任」へ

 「『学級担任』から『学校担任』へ」が同校職員の合言葉。取り組みを通じて、中村光伸校長は「先生たちは、自分の学級以外で授業をすることに『壁』がなくなっている。先生同士の会話も増えた」と実感している。職員室では児童の様子や指導方法を相談したり、授業計画を話し合ったりする姿がよく見られる。全ての職員が全ての子どもを見守り、指導・支援する意識が高まっているという。

 小規模校ならではの課題もある。1学年に学級が複数ある大規模校であれば同じ授業内容を繰り返すことができるが、小規模校では異学年の学級を教えることになるので、授業の準備がそれぞれに必要になる。そのため、業務の効率化にはつながりにくいのだ。

 中村校長は「現場の実情に合わせ、改善しながら取り組みを進めていきたい。業務の負担軽減は教員のためだけではない。目の前の子どもたちにそのメリットが還元されてこそ、本当の意味での働き方改革になる」と話している。

■制度導入、道半ば

 教科担任制は、文部科学省が教員の働き方改革にも効果が期待できるとして、公立小学校で推進している施策の一つ。県内の市や町の教育委員会や小学校でも研修機会を設けるなどして、取り組みを広めようとしているが、実践校は多くないのが現状だ。人員不足が制度導入の課題だという指摘もある。

 新庄第二小は、この制度に詳しい明海大学客員教授の釼持勉さんの支援を受けている。県内の小規模校では、御坊市の名田小学校(児童数81人)も釼持さんの支援を受けて実践中。


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