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国の登録文化財へ答申 和歌山県すさみの水車小屋

井澗家住宅線香水車小屋(和歌山県すさみ町周参見で)=和歌山県教委文化遺産課提供
井澗家住宅線香水車小屋(和歌山県すさみ町周参見で)=和歌山県教委文化遺産課提供
 和歌山県すさみ町周参見の太間川沿いにある「井澗家住宅線香水車小屋」が、国の登録有形文化財(建造物)に登録される見込みとなった。国の文化審議会が19日、文部科学大臣に登録すべきだと答申した。


 県教育委員会文化遺産課によると、水車小屋は木造平屋、鉄板葺(てっぱんぶき)屋根で、大正後期の建設。東西に長い小屋の中央に石積みの水路を通して大型水車を設置し、その左右2室を作業場にしていた。水車の左右には、縦杵(たてぎね)と横杵をそれぞれ四つずつ設置し、計16基の臼を稼働させて、線香の原料となる杉葉などを製粉した。

 県内に現存する唯一の線香水車小屋とみられ、紀伊半島の線香製造業を伝える貴重な遺構という。

 水車本体は、所有者である井澗和良さん(69)=上富田町岩田=の祖父・良太郎氏が1970年代まで製粉作業に使っていた。その後、老朽化していたが、良太郎氏の次男で井澗さんの父・潔氏が生前に「水車の音が思い出される」などと書いていたメモが2019年に見つかり、井澗家は、有志らとともに復活に向けた取り組みを始めた。

 元々の水車から設計して23年夏に組み立て、約半世紀ぶりに水の力で回るところまで復活した。

 水車小屋が文化財として登録される見込みになったことについて、井澗さんは「ありがたいこと。歴史的、文化的な価値があるということで、地元に対する責任感が増してくる」と話した。

 熊野古道大辺路の仏坂にも近く、地域の交流拠点にしたいとも計画している。井澗さんの長男・洸介さん(35)が代表を務める合同会社が、水車小屋そばにある古民家を取得。9月にもカフェとしてプレオープンさせる予定で、水車も活用したいという。洸介さんは「老若男女が楽しめる、癒やされる場所にしたい」と話している。

■新宮の旧校舎も

 今回の答申には、新宮市丹鶴の「旧羽根学園熊野高等経理学校校舎」も含まれている。

 新宮城の南にある元経理学校の校舎で、1937年の建設。65年ごろに校舎の後ろに第2教室棟を増築し、盛時は年間400人以上が学んだ。その後、社会情勢の変化で学校としての役割を終え、現在は貸店舗として活用されている。

 今回、県内で8カ所の計15件が答申されており、いずれも登録されると、県内の登録文化財は140カ所の計372件になる。

 すさみ町と新宮市以外で、国の文化財に登録される見込みの県内の建造物は次の通り。

 和歌山市・宮田家住宅主屋▽海南市・法然寺本堂▽紀の川市・北田家住宅2件(離座敷、土蔵)▽同・淨願寺6件(本堂、庫裏、宝蔵、鐘楼、手水舎、山門)▽高野町・光臺院2件(多宝塔、経蔵)▽同・密厳院苅萱堂

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