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重文・旧西村家住宅の保存修理完了 和歌山県新宮市

保存修理工事が終わった旧西村家住宅。西村伊作が住んでいた頃にあったというバルコニーも復元された(和歌山県新宮市新宮で)
保存修理工事が終わった旧西村家住宅。西村伊作が住んでいた頃にあったというバルコニーも復元された(和歌山県新宮市新宮で)
 和歌山県新宮市出身の建築家・西村伊作(1884~1963)=名誉市民=が大正時代に建てた国の重要文化財「旧西村家住宅」(西村記念館)で、保存修理のための大規模な工事が終わった。老朽化のため、所有する市が3年前から取り組んでいた。失われていたバルコニーなども復元。市教委は「伊作が住んでいた当時の姿に戻し、より文化財としてふさわしい姿になった」としており、来年4月に再開する予定だ。

 同市新宮にある旧西村家住宅は、多くの文化人を輩出した「文化学院」の創設者でもある西村が1914~15年にかけ、自ら設計して建てた木造2階建ての自邸。

 建築面積は129・70平方メートル。1階に居間や食堂、台所、2階に寝室や和室、浴室などを配置し、屋根裏部屋や地下室も備えた建物。日本の近代建築史の上で、家族の生活を中心に考える「居間中心住宅」の成立に大きな影響を与えたとされる。

 2010年6月に国の重要文化財に指定されたが、老朽化が進んでいる上に、地盤沈下によって建物が傾くなどしていたため、市が16年度から、国と県の補助を受け、県文化財センターに設計監理を委託し、初の大規模な保存修理に取り組んでいた。

 この事業では、地盤や建物を補強するとともに、西村が1926年に東京に移転し、その後は別の人が住んでいたことから、西村家が生活していた当時の姿に戻すことを目指して取り組んだ。

 工事では、傷みが進んでいた場所を部分的に解体しながら、木材や瓦など使える部材は活用して修理。当時の写真や痕跡を基にして、ベランダから半円形に飛び出したバルコニーや煙突を復元したり、西村が自然の風合いを出すために使ったという小石を混ぜたしっくいで外壁を仕上げたりして完了した。

 近々、家具を運び入れて配置するなどし、来年4月の再開に向けた準備を進める予定だ。

 市教委文化振興課の小林高太主任(36)は「伊作がいた頃の姿に戻すことができたことにより、家族の生活を中心に捉えた設計思想や考え方を、皆さんにより知ってもらいやすくなったと思う。耐震対策もしているので、安心して見学していただければ」と話している。
1月19日、講演や見学会


 新宮市教委と西村記念館・旧チャップマン邸の会(関康之会長)は1月19日午後1時半から、再開プレイベントを開く。

 事業を担当した県文化財センターの下津健太朗副主査(41)が保存修理の過程を通して分かってきたことなどについて、近くの「旧チャップマン邸」で講演。終了後に、旧西村家住宅を見学する。

 講演会の定員は先着50人程度で、旧西村家住宅の見学は午後4時まで受け付ける。参加は無料。駐車場がないため、市役所駐車場などの利用を呼び掛けている。

 問い合わせは新宮市教育委員会(0735・23・3368)へ。

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