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「臨時情報」でどう動く 南海トラフ地震想定、行政職員対応考える、和歌山

南海トラフ地震臨時情報セミナーのワークショップで広域避難について考える市町村の防災担当職員ら(21日、和歌山県田辺市新庄町で)
南海トラフ地震臨時情報セミナーのワークショップで広域避難について考える市町村の防災担当職員ら(21日、和歌山県田辺市新庄町で)
 南海トラフ巨大地震の発生の可能性が高まった場合に気象庁が発表する「臨時情報」について理解を深めてもらおうと、和歌山県と京都大学防災研究所は21日、県内の市町村や県振興局の防災担当職員らを対象にしたセミナーを田辺市新庄町のビッグ・ユーで開いた。参加した約50人がワークショップなどを通して臨時情報への対応を考えた。

 過去の南海トラフ地震では、東西に長い震源域の東側と西側で時間を置いて連続発生したことがある。こうした場合の地震に備え、想定震源域で一定規模の地震があった場合などに臨時情報が出る。安全な場所に避難するなど、被害を減らすために重要な情報だが、影響が大きいとされる県内でも浸透していないのが現状。まずは行政の担当者が理解を深め、各地域で対応を広めてもらおうと県内で初めて開いた。

 京都大学防災研究所巨大災害研究センターの矢守克也教授が臨時情報について説明し「2パターンがある。大きな揺れの後の情報では落ち着いて行動してほしい。揺れを感じずに情報が出た場合も行動してほしい」と呼びかけた。さらに「情報が出ても地震が起こらないことが多い」と説明した上で「いきなり地震が起これば打つ手はないが、事前に分かれば対応できる可能性はある。前向きに捉えてほしい」と理解を求めた。

 同研究所宮崎観測所の山下裕亮助教は、地震のエネルギー量を表す「マグニチュード」には、従来の「Mj(気象庁マグニチュード)」と長周期の波形全体を使って解析する「Mw(モーメントマグニチュード)」の2種類があることに触れ、Mjは「警報を3分で出せるが、誤差が大きい」、Mwは「巨大地震でも比較的正確に出せるが、解析に時間がかかる」と説明。マグニチュードが決まらないと津波予報が出せず、MjとMwは一致するとは限らないことも説明した。

 和歌山県の対応について県防災企画課の柏木忠寛課長補佐は「臨時情報は認知度が低い。特に若年層は知らない人が多い。大規模災害が発生した場合、避難所が十分に確保できない可能性もある」といった課題を挙げ、SNSや広報紙、地域防災リーダーによる啓発の必要性を示した。避難所の確保が困難な場合は広域避難が考えられ、近隣市町村と連携する必要性も訴えた。

 ワークショップは8班に分かれ、広域での避難をテーマに考えた。各市町村の担当者は「他市町村への避難が必要か」、反対に「受け入れることが可能か」などの質問項目に回答を書き入れ、意見交換もした。

 海岸部が多い那智勝浦町の担当者は「広域避難を考えなければならない。近隣と連携できればと思う」、内陸にある紀美野町の担当者は「数にもよるが、できるだけ受け入れたい。物資は限りがあり、調整が必要」。矢守教授は「市町村を超えての相互対応が求められる。交流を深め、実際に機能するような防災計画に発展するよう願っている」と語った。

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