和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

地域の歴史風化させない 龍神村殿原、B29墜落の慰霊祭

慰霊碑の前で読経する松本周和住職と参列者(5日、田辺市龍神村殿原で)
慰霊碑の前で読経する松本周和住職と参列者(5日、田辺市龍神村殿原で)
 田辺市龍神村の殿原区は5日、太平洋戦争末期に地区で墜落した米軍爆撃機B29搭乗兵の慰霊祭を慰霊碑前で営んだ。今回が80回目。参列者は、犠牲になった兵士を追悼して世界の平和を祈り、史実を風化させないとの思いを新たにした。

 B29は1945(昭和20)年5月5日午前11時ごろ、日本の戦闘機から攻撃を受けて墜落。乗っていた11人のうち7人が死亡した。残る4人のうち3人は後に処刑され、1人は不明とされている。同年6月に地元住民らが供養したのが1回目で、以降は5月5日に慰霊祭を営んでいる。今回は約200人が集まった。

 区長の五味大安さん(58)は「殿原から世界の平和を考える日として発信できることをうれしく思う」とあいさつ。真砂充敏市長は「先の戦争を直接知らない世代が大半を占めるようになった中、地域の歴史の一つとして後世へ伝える取り組みを続けられていることは意義深い」と語った。

 大応寺(龍神村東)の松本周和住職(75)が読経し、参列者が焼香した。新宮市在住のカトリック教会神父のカレン・シェームスさん(82)は「わたしがあなた方を愛したように、互いに愛し合いなさい」という聖書の一節を朗読し、信徒と賛美歌を歌った。

 「平和の語り部」になっている地元の古久保真介さん(61)は、ウクライナやイスラエルで戦争が続いていることに触れ「先人の思いが世界の平和につながるよう、今後も後世へ語り継いでいかないといけない」と力を込めた。

 墜落の史実を調査してきた郷土史家の古久保健さん(86)は「(慰霊祭が)これだけ定着したのは住民の力があったからこそ」と意義を語り「今後も平和のために何ができるかを考えていきたい」と話した。

 会場では、地元の婦人会が茶がゆなどを来場者に振る舞った。慰霊祭の後には餅まきもあった。

公式SNS!フォローしてね!
友だち追加

アクセスランキング

趣味・娯楽

読者チャンネル

新着リリース

紀伊民報からのお知らせ