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誘致断念求める声相次ぐ 和歌山市でIR公聴会

「公聴会」でIR誘致の「区域整備計画案」について、和歌山県に意見を述べる「公述人」(13日、和歌山市で)
「公聴会」でIR誘致の「区域整備計画案」について、和歌山県に意見を述べる「公述人」(13日、和歌山市で)
 和歌山県が、和歌山市への誘致を目指す「カジノを含む統合型リゾート施設」(IR)の区域整備計画案について、県民から意見を聞く「公聴会」が13日、同市内で開かれた。意見のほとんどが誘致に反対する内容で、ギャンブル依存症患者の増加や治安の悪化などを危惧し、誘致の断念を求める意見が相次いだ。


 あらかじめ申し込んで選ばれた「公述人」20人が5分ずつ、意見を述べた。意見と、それに対する県の考え方は後日、県IR推進室のホームページで公表する。

 最初に登壇した男性は「和歌山を良くしたいという思いは(県と)同じ」と理解を示した一方「カジノでは、お客の懐から事業者の懐へ金が移動するだけで、新しい価値は生まれない。生まれるのはギャンブル依存症という病気だけ」と指摘した。

 依存症患者の増加を心配する意見は他にも多数あった。祖父と父がギャンブル依存が原因で2人とも離婚したという女性は「(2人とも優しい人だったが)ギャンブルは、普通の人の正常な心の働きをなくさせてしまう」と語った上で「(県が)依存症対策をする一方、カジノ誘致を推進するのは矛盾しないか。誘致を断念してほしい」と求めた。

 誘致への議論が足りていないという意見もあった。IRがあるアジアの街で聞き取りしたり、進出を検討していた事業者と面談したりしたという男性は、社会的影響の大きさについて「原発や米軍基地を誘致するのと同じくらいの大問題だという認識が全くできていない」と批判。具体的には、市民との対話がなさ過ぎる▽IRができれば移住定住する外国人が増加するが、生活習慣、学校、医療態勢、警察なども一切考慮されていない―と指摘。別の男性からも「依存症、多重債務、犯罪などのさまざまな影響に触れていない計画案は信ぴょう性を欠く」という意見があった。

 また、弁護士の男性はIR誘致を「実に反倫理的な発想。人を不幸にし、社会に害悪を及ぼすカジノ事業で地域が発展することなどあろうはずがない」。計画地の近くに住んでいるという男性も、「本来、住民の福祉や安全を守る自治体がやるべきことなのか。地域のほとんどの住民が『ばくちの街』になるのではと不安になっている。その中で強行するのか」と述べた。

 一方、誘致に賛成する声も複数あった。「将来を考えた場合、経済や所得、雇用創出効果が期待できるIRは、計り知れない活性化の起爆剤になる。インフラ整備や、市民の税の軽減につながることなど、プラスのことがたくさんある」「コロナ禍になり、商売が大変。お客さんに来てもらって経済を回すことが一番。危険とか、あかんとかいう意見も踏まえ、皆で素晴らしいIRを造ってはどうか」「IRは私たちの働く場所と税収を得る可能性を持っている。デメリットをつぶしていければ、メリットが大きくなる」などの意見もあった。

 「公聴会」は和歌山市に隣接する海南市でも12日に開かれた。県などは「公聴会」のほか、すでに終了した「パブリックコメント」(県民からの意見募集)や、オンラインを含め県内14カ所で開いた「説明会」での意見を計画案に反映。和歌山市議会などの同意、県議会の議決を経て、期限の4月28日までに国に申請する予定にしている。

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