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「サウナで性病に感染」はウソ? 産婦人科医が“ほぼ言い訳”と断言する理由「医学的見地では、これが現実」

その“言い訳”はもう通用しない?
その“言い訳”はもう通用しない?
 年末年始は、奇跡の9連休。思わず気が緩んで、心も体も開放的になってしまう…かもしれない。そんなとき、気を付けなければならないのが「性感染症」だ。自覚症状がないケースも多く、気づいたときにはパートナーにも影響が及んでいることも。そこで、休暇前に知っておきたい性感染症の予防法や基本知識など、性感染症に詳しいクリニックフォア産婦人科専門医に聞いた。

【一覧】もしかして…気になる人はぜひチェック!オンラインでも治療できる性感染症

■「サウナで感染した!」「バスタオルで感染した!」の真偽とは…

――この年末年始の長い休みで、とくに気を付けるべき性感染症はありますか?

 「季節性で特にこの性病が増えやすいという傾向はないので、性感染症ほぼ全般に注意が必要でしょう。強いていうなら、現在大流行中の梅毒ですね。とはいえ、全体的に見ればクラミジアや淋病のほうが圧倒的に多いので、いつも通りすべてにおいてお気をつけください」

――性感染症の検査や受診が増える時期はあるのでしょうか?

 「はい。国立感染症研究所のデータで見ると、性感染症は例年6月から8月に患者数がピークとなる傾向があります。おそらく、夏になると多くの方が開放的な気持ちになり、性交渉が増加するからではないかと推測します。冬にもクリスマスなどのイベントがありますが、やはり夏のほうが多いですね」

──基本的な質問ですが、性感染症は性行為でのみ感染するものでしょうか? たとえば、「サウナで感染した!」「バスタオルで感染した!」という話も聞いたことがあるのですが…。

 「そんなことは、ほぼないです。もちろん可能性が完全にゼロとまでは言い切れないですが…。例えば男性であれば、感染している人の尿道から出た膿がバスタオルに付き、さらに別の方が直接そこに性器をしっかりと付けてしまうというピンポイントな接触がない限り、起こり得ないからです。そもそも、性病の原因菌やウイルスは、粘膜などの湿潤環境を離れると簡単に死滅します。確かにネットにもそういった可能性の話は出回っていますが、あれはほぼ言い訳だと思いますね。例えば事情がある人…奥さんがいるのに感染しちゃったという方は、サウナで感染したことにするしかないですから(笑)」

――なるほど。浮気や不倫を隠す言い訳になっている…。

 「性交渉でなければ、どこで感染したかの特定もできない。サウナで感染したという証明なんて誰もできない。ですから、理論上ゼロではない可能性にかけて苦し紛れに言うしかない、といった状況だと思います」

――身に覚えのある方にはつらい現実ですが、パートナーに不義をされた方には有益な情報ですね。

 「医学的見地では、これが現実だということを受け止めていただきたいと思います」

――性感染症かどうか不明でも、デリケートゾーンに違和感がある場合はまずどの科を受診するといいでしょうか? いきなり性病科を受診するのはハードルが高いという人も多そうです。

 「身に覚えがあるのなら、性病科がもっともいいのは確か。でも、もし抵抗があるのなら、まずは皮膚科、女性なら婦人科、男性なら泌尿器科でもいいと思います。ただ、性病科のクリニックも男女でスペースを分けたり、入口と出口を別にしたりと、ものすごくプライバシーに配慮しているところもあります。また、自費診療にはなるのですが、匿名で受診できるところもあります。その場合は保険証もいらないので、保険利用記録も残りません」

――そうなんですね。ただ、受診をためらうあまりにネット情報で自己診断してしまう人も。

 「そうすると、どうしても自分の都合のいいように解釈したり、『自分は大丈夫』と思える記事をわざわざ探してしまう恐れがあります。性病だと思いたくない気持ちは理解できますが、やはりきちんと検査することをお勧めしますね。性病は、自分だけの問題ではありません。放置してしまうと、それが不妊症にまでつながってしまうケースもあります。そうなるともう後戻りはできないので、しっかりとした知識を持ったお医者さんにかかるようにしてください」

――無症状だったり、梅毒のように症状が一旦は治まる性感染症もあります。放置したとして、治ることもあるのでしょうか?

 「例えばカンジダやヘルペスは、一度罹患するとずっと体内に潜伏し、体調が悪くなったらまた出てきたりします。完治はできないので、無症状だとしても油断は禁物です。ときどき『クラミジアを放置していたが治った』という方もいますが、おそらく他の病気で服用した抗生物質がたまたま性感染症も治すことになった、というようなことかと思います。それは偶然の一例に過ぎないので、勝手に治ることを期待しないでください」

――昨今ではクリニックの「ブライダルチェック」もありますが、受ける人は多いですか?

 「CSW(コマーシャルセックスワーカー)の方に限らず、近年はプレコンセプションケアの概念の広まりとともに、男女ともに受けられる方が増えている印象はあります。女性が多い、男性が多いということはなく、パートナー2人でいらっしゃる方も多いですね。最近はオンラインでも検査キットが手に入ることもあり、ハードルは確実に下がったと言えると思います」

――最後に、性感染症について先生からのアドバイスをお願いします。

 「ちゃんと検査でわかるものですし、薬を使えば治ります。先程も言いましたが、放置すると不妊症や腹膜炎になってしまうこともあるので、早めにしっかり治療しましょう。また、無症状でも感染していればパートナーに移ってしまうので、避妊具をしっかりつけることは徹底してください」

【監修】
クリニックフォア産婦人科専門医
大阪大学医学部を卒業後、産婦人科専門医として大学病院等で主に生殖医療に従事。その後、厚生労働省に出向し、医系技官として不妊治療・出生前診断等の母子保健領域における行政施策推進に携わる。現職では女性のライフステージに応じたウェルネス向上をサポートすべく、ICT等を活用したスマートな課題解決の実現を目指す。

(文:衣輪晋一)

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