インフル? コロナ? りんご病? 「子どもの咳が止まらない」 流行中の感染症、冬休みの注意点を内科医が解説
様々な感染症が流行している年の瀬、最近は「子どもの咳が止まらない」と気にする親も多い。そんな中、子どもたちはいよいよ冬休みを迎える。年末年始の帰省や旅行で罹患したり症状が出ることは避けたいし、祖父母など高齢者と会うことも心配。子どもの感染症について、大人はどう気をつければいいのか。感染症に詳しいクリニックフォア飯田橋院院長・田島敬也先生に聞いた。
【一覧】この咳は一体!? 子どもに多い感染症の症状、予防法も!
■インフル、コロナ、りんご病…子どもたちに流行中の感染症、症状は?
――この冬、子どもたちの間で様々な感染症が流行っているようですが、どんなものが多いのでしょうか?
「まず、大人の間でも多いインフルエンザや新型コロナウイルス感染症、マイコプラズマ肺炎は、子どももかかりやすい感染症です。あとは、子どもに多いのが溶連菌感染症、通常は春から初夏にかけて流行する“りんご病”と言われる伝染性紅斑。さらに、夏に流行った手足口病は下火になったものの、今も罹患するお子さんがいるようです」
──それぞれどのような症状か教えてください。
【インフルエンザ】
「のどの痛みや咳、鼻水はもちろん、突然の高熱や関節痛、筋肉痛が出るのが特徴です」
【新型コロナウイルス】
「インフルエンザに症状が似ていますが、強いのどの痛みが特徴です。味覚障害が起こった場合は、高い確率で新型コロナウイルスが疑われます」
【マイコプラズマ肺炎】
「咳がメインの症状です。乾いたせきが長く続く場合は、マイコプラズマ肺炎を疑った方が良いでしょう」
【溶連菌感染症】
「熱が39度、40度と高く、のどだけがとても痛くて他に咳や鼻水などの症状が軽度の場合は可能性が高いです。これは抗生剤で治療をします」
【りんご病(伝染性紅斑)】
「その名のとおり、お子さんの場合は頬がりんごのように赤くなります。頬が赤くなる1週間くらい前に風邪のような症状があり、この時期に人に感染させる可能性があります。頬が赤くなる頃には感染力はなくなります」
【手足口病】
「手のひらと足の裏に赤い発疹、口の中にも口内炎のようなものができます。お尻にも発疹が出る場合も。熱とともに発疹が体中に広がっていくのが特徴です」
――ただでさえ子どもの症状はわかりにくいうえに、似たものが多いですね。
「多くの方が症状が長引いてから受診したり、逆に早すぎたりするので、検査のタイミングも診断も難しいですね」
――検査・受診のタイミングの目安を教えてください。
「インフルエンザや新型コロナウイルスは、発熱などの症状か出現してから12時間ほど経った後でないと、正確な検査の結果が出ないと言われています。なので、お昼に具合が悪くなって同日夕方に検査しても、おそらく陰性になってしまいます。夕方に症状が出たのなら翌朝、朝に症状が出たのなら夕方以降など、ある程度時間を経ることが必要です。もし検査で陰性になっても症状が続く場合は、このようにタイミングが早すぎた可能性もあるので、再検査をすることをおすすめします」
――「子どもの咳が止まらない」と検索する人が多いようなのですが、これはマイコプラズマ肺炎なのでしょうか?
「その可能性もありますが、熱がまったく出ずに咳だけが朝や夜のみ出現する場合は、咳喘息といわれるアレルギー性のせきのこともあります。感染症では抗生剤、喘息では吸入薬と、治療内容は全く違ってきます。ただ、マイコプラズマ肺炎も自然経過で治ることがあり、感染症か喘息かの見分けはなかなか難しいのです」
■子どもから大人、高齢者にも移る感染症、帰省や旅行時の注意点
――こういった子どもがよくかかる感染症は、大人にも移るのでしょうか?
「すべて移る可能性があります。ただ、子どもと大人では症状が違うこともあって。たとえばりんご病は、大人は頬が赤くなる症状が出ない場合もあるんです。大人に多いのは関節痛とむくみで、それとともに風邪っぽい症状が出て、実はりんご病だったということは少なくありません。また手足口病は、大人の方が症状が重く出る傾向があり、手足の発疹や口内炎がとにかく痛いなどの声を聞きます。いずれにせよ、周囲に感染している人がいるかどうかも尋ね、そこから診断できる場合もあります」
――大人にも移るとなると、帰省などで高齢者に移さないかも心配です。
「そうですね。高齢者の場合、インフルエンザや新型コロナウイルスは重症化する可能性があるので注意が必要です。マイコプラズマ肺炎が移ることもありますが、これは重症化する可能性は低い。ただし高齢者の場合は肺炎により、そこから心不全のような合併症が起こることもあるので注意が必要です」
――子どもを感染症から守る、また罹患した場合は他の人に移さないようにするには、どんな対策が必要でしょうか。
「まずマスクや手洗い、うがいをしっかりさせることが基本です。あとは換気ですね。特にインフルエンザ、コロナウイルス、マイコプラズマ肺炎には効果的。寒くても締め切りにせずに、時々は窓を開けて換気してあげることは重要です。また、お子さんに近い大人や久々に会う高齢者は、事前にワクチン(インフルエンザや新型コロナウイルス)を打っておけば安心です」
――交通機関での移動では、換気ができないこともありますよね。
「そのとおりです。飛行機や新幹線などの密閉空間で、さらに人が混み合う時期でもあるので、なるべく混雑する時間を避けられるといいですね。原則としては、熱やせきなど体調に異変があるときは自粛する。とくにインフルエンザなどは、発症する24時間前から3日~7日間が最もウイルスを振りまくリスクが高くなります。子どもに無理させるのもよくないですし、周りに感染を広げないためにも、事前に体調はしっかり見てあげるようにしてください」
――旅行先や帰省先で感染してしまう可能性もあります。
「冬休み明けに感染拡大することは多いので、休みが終わった後もマスクの着用、手洗いやうがいなどは続けるといいと思います。冬の間はとにかく注意するようにしてください」
【監修】
田島敬也(たじまたかや)
クリニックフォア飯田橋院院長。日本内科学会総合内科専門医、日本腎臓学会専門医、日本透析学会専門医、日本内分泌学会専門医。2010年に慶應義塾大学を卒業後、腎臓・内分泌疾患をはじめとした総合診療や医学教育に従事。2023年よりクリニックフォア飯田橋院院長に就任。
(文:衣輪晋一)
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――この冬、子どもたちの間で様々な感染症が流行っているようですが、どんなものが多いのでしょうか?
「まず、大人の間でも多いインフルエンザや新型コロナウイルス感染症、マイコプラズマ肺炎は、子どももかかりやすい感染症です。あとは、子どもに多いのが溶連菌感染症、通常は春から初夏にかけて流行する“りんご病”と言われる伝染性紅斑。さらに、夏に流行った手足口病は下火になったものの、今も罹患するお子さんがいるようです」
──それぞれどのような症状か教えてください。
【インフルエンザ】
「のどの痛みや咳、鼻水はもちろん、突然の高熱や関節痛、筋肉痛が出るのが特徴です」
【新型コロナウイルス】
「インフルエンザに症状が似ていますが、強いのどの痛みが特徴です。味覚障害が起こった場合は、高い確率で新型コロナウイルスが疑われます」
【マイコプラズマ肺炎】
「咳がメインの症状です。乾いたせきが長く続く場合は、マイコプラズマ肺炎を疑った方が良いでしょう」
【溶連菌感染症】
「熱が39度、40度と高く、のどだけがとても痛くて他に咳や鼻水などの症状が軽度の場合は可能性が高いです。これは抗生剤で治療をします」
【りんご病(伝染性紅斑)】
「その名のとおり、お子さんの場合は頬がりんごのように赤くなります。頬が赤くなる1週間くらい前に風邪のような症状があり、この時期に人に感染させる可能性があります。頬が赤くなる頃には感染力はなくなります」
【手足口病】
「手のひらと足の裏に赤い発疹、口の中にも口内炎のようなものができます。お尻にも発疹が出る場合も。熱とともに発疹が体中に広がっていくのが特徴です」
――ただでさえ子どもの症状はわかりにくいうえに、似たものが多いですね。
「多くの方が症状が長引いてから受診したり、逆に早すぎたりするので、検査のタイミングも診断も難しいですね」
――検査・受診のタイミングの目安を教えてください。
「インフルエンザや新型コロナウイルスは、発熱などの症状か出現してから12時間ほど経った後でないと、正確な検査の結果が出ないと言われています。なので、お昼に具合が悪くなって同日夕方に検査しても、おそらく陰性になってしまいます。夕方に症状が出たのなら翌朝、朝に症状が出たのなら夕方以降など、ある程度時間を経ることが必要です。もし検査で陰性になっても症状が続く場合は、このようにタイミングが早すぎた可能性もあるので、再検査をすることをおすすめします」
――「子どもの咳が止まらない」と検索する人が多いようなのですが、これはマイコプラズマ肺炎なのでしょうか?
「その可能性もありますが、熱がまったく出ずに咳だけが朝や夜のみ出現する場合は、咳喘息といわれるアレルギー性のせきのこともあります。感染症では抗生剤、喘息では吸入薬と、治療内容は全く違ってきます。ただ、マイコプラズマ肺炎も自然経過で治ることがあり、感染症か喘息かの見分けはなかなか難しいのです」
■子どもから大人、高齢者にも移る感染症、帰省や旅行時の注意点
――こういった子どもがよくかかる感染症は、大人にも移るのでしょうか?
「すべて移る可能性があります。ただ、子どもと大人では症状が違うこともあって。たとえばりんご病は、大人は頬が赤くなる症状が出ない場合もあるんです。大人に多いのは関節痛とむくみで、それとともに風邪っぽい症状が出て、実はりんご病だったということは少なくありません。また手足口病は、大人の方が症状が重く出る傾向があり、手足の発疹や口内炎がとにかく痛いなどの声を聞きます。いずれにせよ、周囲に感染している人がいるかどうかも尋ね、そこから診断できる場合もあります」
――大人にも移るとなると、帰省などで高齢者に移さないかも心配です。
「そうですね。高齢者の場合、インフルエンザや新型コロナウイルスは重症化する可能性があるので注意が必要です。マイコプラズマ肺炎が移ることもありますが、これは重症化する可能性は低い。ただし高齢者の場合は肺炎により、そこから心不全のような合併症が起こることもあるので注意が必要です」
――子どもを感染症から守る、また罹患した場合は他の人に移さないようにするには、どんな対策が必要でしょうか。
「まずマスクや手洗い、うがいをしっかりさせることが基本です。あとは換気ですね。特にインフルエンザ、コロナウイルス、マイコプラズマ肺炎には効果的。寒くても締め切りにせずに、時々は窓を開けて換気してあげることは重要です。また、お子さんに近い大人や久々に会う高齢者は、事前にワクチン(インフルエンザや新型コロナウイルス)を打っておけば安心です」
――交通機関での移動では、換気ができないこともありますよね。
「そのとおりです。飛行機や新幹線などの密閉空間で、さらに人が混み合う時期でもあるので、なるべく混雑する時間を避けられるといいですね。原則としては、熱やせきなど体調に異変があるときは自粛する。とくにインフルエンザなどは、発症する24時間前から3日~7日間が最もウイルスを振りまくリスクが高くなります。子どもに無理させるのもよくないですし、周りに感染を広げないためにも、事前に体調はしっかり見てあげるようにしてください」
――旅行先や帰省先で感染してしまう可能性もあります。
「冬休み明けに感染拡大することは多いので、休みが終わった後もマスクの着用、手洗いやうがいなどは続けるといいと思います。冬の間はとにかく注意するようにしてください」
【監修】
田島敬也(たじまたかや)
クリニックフォア飯田橋院院長。日本内科学会総合内科専門医、日本腎臓学会専門医、日本透析学会専門医、日本内分泌学会専門医。2010年に慶應義塾大学を卒業後、腎臓・内分泌疾患をはじめとした総合診療や医学教育に従事。2023年よりクリニックフォア飯田橋院院長に就任。
(文:衣輪晋一)
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